「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第771回
支店とは一味違う「井泉本店」(その2)

上野広小路(地番は湯島)の老舗とんかつ店、
「井泉本店」の奥座敷にて
サテライトと二人で品書きに見入っている。
奥座敷といっても江戸城の大奥のような気配はなく、
いたって庶民的である。
もっとも大奥には入ったことがないが
一度入ってみたかった。

ヒレかつ(1350円)とヒレかつ定食(1800円)。
ロースかつ(1250円)とロース定食(1250円)。
ヒレとロースを定食にしたときの
値段の不整合性には首を傾げるばかりだ。
ロースかつのロースより、サイズが小さいか、
肉質が劣るかのどちらかだろうが
説得力に欠けるうらみは払拭できない。

品書きの中の必食科目は何てったって豚の唐揚げだ。
他店にはないこの店独自のメニューは
ユニークにして美味。
あとは蟹缶の入ったオムレツだろう。
サテライトは酒よりも飯を得意とするご仁で
盛合わせ定食に食指を動かしている。
とりあえず、この3品をお願いすることに――。

塩辛(500円)がちょっと気になった。
自家製と謳っていないから出来合いなのだろう。
するとドリンクメニューの端っこに
お通し(塩辛)・・・・・・200円
というのを見つけた。
これならあえて注文することはない。
案の定、ビールに遅れること数分で運ばれた。
ところが、これが箸にも棒にも掛からない代物。
化調の味しかしない、いかの塩辛なのだ。
食卓の隅に追いやるほかに手立てがなかった。

そうこうするうち、豚の唐揚げができ上がる。

長ねぎのコロモをまとう豚唐揚げ
photo by J.C.Okazawa

長ねぎの効果絶大なものがあり、
かき揚げのような味わいがあって、とても美味しい。
この店はかつ丼にも玉ねぎではなく、長ねぎを使う。
店主がよほど長ねぎ好きなのかもしれない。

唐揚げを追いかけるように今度はオムレツが登場。

なぜかお腹にヘソがある
photo by J.C.Okazawa

蔵前の「すぎ田」もそうだが
とんかつ店のオムレツは
下手な洋食店のそれを圧倒するものが少なくない。
「井泉本店」の蟹オムレツもまたしかり。

2本目のビールもカラにしたJ.C.は清酒・白鷹の上燗。
相方は盛合わせ定食に夢中だ。
盛合わせの内容は
一口かつ・海老フライ・海老コロッケ・帆立フライ。
タルタルソースがたっぷり添えられた。
定食には豚汁・お新香・ごはんが付く。
海老や帆立を一切れずつもらって食べてみたが
やはり豚唐揚げやオムレツを凌駕するほどではない。
メインのとんかつや海老フライよりも
ここでは断然、上記の二品を推挙する。

それにしても心置きなくくつろげるレトロな空間。
都内に散らばる支店や
ここから分離独立した「まい泉」の本支店、
加えてデパートや食品街の小売店まで含めると、
その数は計り知れない。
どんなに店舗が増えようと、
湯島の「井泉本店」を超える名店が現れることはない。
それだけは断言できる。


【本日の店舗紹介】
「井泉本店」
 東京都文京区湯島3-40-3
 03-3834-2901

 
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2009年6月17日(水)

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