第780回
第六感を刺激され(その2)
ずいぶんと食べ応えのある前菜のサーモンのお次はスープ。
これも半端なスープではなかった。
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スープが脇役のスープ
photo by J.C.Okazawa
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メニューにはこうあった。
枝豆のクリームスープ
鰻のキャラメリゼと燻製、雲丹を添えて
ここから想像するに
枝豆を裏漉ししたポタージュに
浮身として粒雲丹でも塗って焼き上げた鰻と
それとは別に鰻の燻製が使われるものと思っていたが
結果はご覧の通りで、かなりのボリュームである。
まずスープには枝豆本体とじゅんさいが散っている。
その中央に鰻の燻製を座布団代わりにした生海胆が
鎮座ましまして脇には鰻の蒲焼きならぬ、
照り焼きを従えているのである。
雲丹というのは瓶詰めの加工品だからこの場合、
「海胆を添えて」と明記するのが正しい。
この店は地下にパン窯を備えており、
良質のパンを提供してくれる。
加えて有塩・無塩の2種類のバターも美味しく、
ついつい食が進んでしまい、
この時点で早くも腹八分目に達していた。
ここで赤ワインである。
ブルゴーニュ党のJ.C.が選んだ赤の一本目は
オスピス・ド・ボーヌのコルトン‘86年。
まったくもってブルゴーニュの古酒には目がない。
枯れてくすんだ味わいは何物にも代えがたい。
続いての皿はポワソン(魚料理)。
真ごちとアリコ・ヴェール(どじょういんげん)の
ロール仕立てがきらびやかに登場した。
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クリームソースと野菜のモザイク編みを添えて
photo by J.C.Okazawa
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これぞフランス料理といった気配が皿に漂っている。
ヌイユ状の野菜の下にはイカ墨のリゾットが隠れていた。
初夏を迎えて真ごちは今がハシリ。
鮨店の種ケースにも並ぶようになった。
こちは刺身や洗い以外で食べることは滅多にない。
いずれにしろクセのない白身魚には
淡白にして繊細な美味が宿っているものだ。
ヴィアンド(肉料理)は伊賀牛。
伊賀市といったら県庁所在地の津市を
はさむようにして松阪市の隣りの隣り。
当然、この地の牛肉だって不味いわけがない。
フィレ肉のローストには
フェイヴレイのシャンベルタン・クロ・ド・ベーズ‘84年を。
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クミン風味の人参を添えて
photo by J.C.Okazawa
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伊賀牛もけっこうだったがクミンの香る人参は
パリの三つ星「ランブロワジー」を想起させて懐かしい味。
デセールはホワイトチョコとさくらんぼのムース。
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グリオット種のさくらんぼは姫りんごのよう
photo by J.C.Okazawa
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あまりデセールをいただかないJ.C.も
今宵は可憐なさくらんぼに魅せられて完食いたしました。
白のデザートワインはシャトー・オー・ベルジュロン‘01年。
プチフールとエスプレッソで締めくくって
贅沢な一夜は更けていったのでした。
【本日の店舗紹介】
「ル・シズィエム・サンス」
東京都中央区銀座6-2-10
03-3575-2767
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