第793回
仔牛VS仔羊 さて軍配は?(その3)
根津の美食的ランドマークは串揚げの「はん亭」。
その立派な3階建て木造建築の向かいに
「レストラン・リサキ」という
一軒のフランス料理店がある。
そこでスープをいただくところ。
普段はスープを飲まないのにあえて所望したのは
好物のスープ・ド・ポワソンをメニューに発見したからだ。
誰が決めたものか、世界三大スープなどと、
陳腐な着想が諸説あるそうで
通説ではブイヤベース(ボルシチ説あり)、
ふかひれスープ、トム・ヤム・クンと
いうことになっているらしい。
ブイヤベースはスープというより主菜だから
ここはスープ・ド・ポワソンに登場願いたい。
肝心のスープ・ド・ポワソンの出来映えは
軽い仕上がりのため、コク味には欠けるものの、
前菜から主菜への継ぎ役としてはこれもよし。
ここで本日のメインイヴェント、仔牛VS仔羊である。
最初に仔牛の登場。
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仔牛フィレ肉のソテー
photo by J.C.Okazawa
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グリュイエールチーズを乗せ、オーヴンで仕上げている。
味は悪くはないけれど、ポーションが小さい。
それよりも気に掛かったのは、肉に赤みがさしており、
これはミルク以外のものを摂取した証し。
やはりミルク・フェッド(乳呑み)の
持つべき繊細さはすでに失われていた。
続いて仔羊である。
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骨付き仔羊のロースト
photo by J.C.Okazawa
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フレンチの定番、カレ・ダニョーというヤツだ。
こちらは脂身の除去が少ないせいもあって
かなりのビッグ・ポーションで来た。
しかも同じプリフィクスながら
仔牛には割増し料金が掛かるので
価格差はいっそう広がることになる。
肝心の味のほうは火の通しピシャリの仔羊に軍配だ。
現状、日本で本物の仔牛肉にありつくのは
至難の業と言わざるを得ない。
気になったのは仔牛にも仔羊にも
ガルニテュールとして生野菜が添えられたこと。
温かい肉料理にはやはり温野菜であるべきだ。
温製料理に生野菜のガルニが許されるのは
カトレットやクラブケーキなど、揚げ物のときだけである。
これは日本の洋食屋にも言えることで
とんかつ同様、ポークカツにキャベツなら問題なくとも
ポークソテーにキャベツでは大問題だ。
シェフはホテル西洋の出身だが
このあたり改善の余地大いにあり。
デセールは少々、持て余した。
ココナッツのブランマンジェ、
フランボワーズのソルベ、
どちらも特筆すべき点はない。
ところが締めのエスプレッソが上々。
香り高く、これはトップクラスであった。
仔羊のローストとエスプレッソが
「レストラン・リサキ」のオススメである。
【本日の紹介店舗】
「レストラン・リサキ」
東京都文京区根津2-10-2
03-3822-0336
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