「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第797回
海老が二匹の江戸前天丼

それほどの好物でもないけれど、
ときどき食べたくなるのがいなり寿司。
おそらく幼い頃の遠足やら運動会やら
子どもにとっては楽しみな「慶事」と
記憶が連動していることが理由の一つなのだろう。

東京の誇るいなり寿司の名店も
根津「三花」が長期休業に入っており、
東上野「きつ音忠信」にいたっては閉店してしまった。
明るいニュースは長らく休んでいた白山上「宝らい」が
店主の体調の回復に伴い、近々再開の噂が舞い込んだこと。
押上「味吟」の変わらぬ盛業ぶりは心強い限りだ。

ふと思い立って未踏だった千駄木「いそ貝」に出向いた。
買い求めたいなり&のり巻きは
期待ほどではないものの、そこそこの満足感はある。

と、ここまででおいなりさんのハナシは終わり。
今日のコラムの主役はいなり寿司ではない。
実は千駄木「いそ貝」を訪れた際、
かねてより気になっていた天ぷら「てる井」の存在に
あらためて気づいたのである。
間口の狭い小体な店構えはどことなく、
美味しそうな雰囲気を漂わせている。

数日後の昼下がり。
千駄木在住の友人を誘い出して暖簾をくぐった。
12時過ぎだというのに店内はガラガラ。
というより、客はわれわれ二人だけだ。
陽射しの強い日のことで
さっそくビールといきたいところを我慢する。
白状すれば、これは我慢したのではなく
前夜のアルコールが抜け切れていないだけのこと。

ハナから天丼をいただくつもりながら
一応、品書きを手に取る。
天丼(松)1400円 天丼(竹)1100円
とあった。
「松と竹の違いはなんですか?」――こう訊ねると
店主応えて曰く、
「量が違います!」
何ともすげない返事が返ってきた。
ここは二人とも無条件で(竹)を。

コロモにくぐらせる前の海老をチラリとのぞくと
東南アジア系のタイガーと推察された。
この値段では当たり前のハナシだ。

待つこと10分。
出来上がったどんぶりはかくの如し。

海老が2尾にピーマン1片
photo by J.C.Okazawa

てっきりキスかメゴチあたりが
含まれていると思っていたから、やや肩透かし気味。
ところがこの海老、食感プリップリで美味。
思わず店主の顔をまじまじと見上げたほどだ。
<ふ〜ん、やるじゃないっすか、オヤジさん>

ピーマンが興醒めという人がいるかもしれぬが
しし唐の親玉だと思えば、どうということはない。
味噌椀(310円)は別売りながら、
この日の暑気ならむしろジャマなくらいだ。
付いてきたのは大葉の混じったキャベツもみだけ。
こんなシンプルな天丼も、たまには大いに佳とすべし。


【本日の店舗紹介】
「てる井」
 東京都文京区千駄木2-33-2
 03-3822-4567

 
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2009年7月23日(木

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