第806回
夏になったら啼きながら
寅さんシリーズのファンである。
数ある寅さんの決めゼリフの中でも
一番好きなのは
「 夏になったら啼きながら
必ず帰って来るあのつばくろさえも
何かをさかいにパッタリ姿を
見せなくなることだってあるんだぜ 」
コレなのだ。
つばくろは言わずと知れたつばめのことである。
一年中、都内各地を散歩していて
いまや、「散歩の達人」ならぬ、
「徘徊の中年」の異名をとるJ.C.だが
歩いているときの大きな楽しみは年を通して二つ。
一つ目は毎年二月の末に
人家の庭先から漂い流れる沈丁花の香り。
鼻先がこの匂いを感じ取ると
「ああ、春はもうそこまで来ているんだなァ」――
そう、しみじみ思うのである。
もう一つは四月末。
町の商店街につばめがやって来て
ひるがえる黒い翼を目にしたときだ。
その姿を捉えたら即刻、
商店街に面した民家の軒先を探す。
ほとんどの場合、駐車場なのだが
軒の内側につばめが巣を作っているのである。
ある日、ランチを食べに出向いた谷中で
可愛い4羽のヒナを見つけた。
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この子たちの行く末を気遣わずにはいられない
photo by J.C.Okazawa
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素っ頓狂な顔をよくよく見ると、
ビーバーやラッコの赤ちゃんに似ていないこともない。
無事に南にお帰りよ!
目星をつけておいた夕焼けだんだんの中華料理店が
夜のみ営業だったことが判り、
そのまま歩き続けてやって来たのが
西日暮里のスペイン料理店「アルハンブラ」。
週に4夜、フラメンコのショーが
楽しめる都内でも稀少なスポットである。
少々時代遅れで仰々しい内装は
東京タワーのふもとにあった
老舗ロシア料理店「ボルガ」を想起させた。
この店のランチがオススメ。
魚介のパエリャがたったの1100円で
食べられるのが何よりもありがたい。
1人前3千円もしながら
2人前より、なんて店が多い中、
こういう良心的ななメニューはうれしい。
さっそくお願いする。
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海老・いか・帆立・ムール貝入り
photo by J.C.Okazawa
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鉄鍋で運ばれ、そこそこのボリュームがあり、
食味も本格的なものである。
おまけにサラダと飲み物まで付く。
この日は中華に肩透かしを食らったものの、
可愛いつばめたちに遭遇したし、
旨いパエリャにもありついた。
常日頃の行いの賜物というほかはない。
【本日の店舗紹介】
「四羽の子つばめ」
住所不定 おそらく今頃は南洋の島
電話ナシ
【本日の店舗紹介】
「アルハンブラ」
東京都荒川区西日暮里5-23-6
03-3806-5017
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