「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第822回
泣いてくれるな ほろほろ鳥よ(その1)

昭和13年に封切られた映画「愛染かつら」の
主題歌「旅の夜風」は戦前最大のヒット曲で
120万枚も売れたという。
一番の歌詞を紹介すると、

♪ 花も嵐も 踏み越えて
      行くが男の 生きる途
   泣いてくれるな ほろほろ鳥
       月の比叡を 独り 行く ♪
          (作詞:西條八十)

ここに出て来るほろほろ鳥が不可解でならなかった。
この時代にホロホロ鳥が日本にいたのだろうか?
ホロホロ鳥ははたして、ほろほろと啼くのだろうか?
このことである。

調べてみて真相が判明した。
作詞者の西條八十は
琵琶歌「石童丸」の中にある詩、
「ほろほろと鳴く山鳥の声聞けば」から
「ほろほろ鳥」という架空の鳥の名を
思いついたというのである。
ふ〜ん、なるほどネ、そういうことだったのか。

ここで思い出されるのが1961年のヒット曲、
松島アキラの歌った「湖愁」の二番の一節。

♪ はぐれ小鳩か 白樺の 
   梢に一羽 ほろほろと
   泣いて涙で 誰を呼ぶ ♪
          (作詞:宮川哲夫)

これであった。
琵琶歌でほろほろと鳴いているのは山鳥だが
歌謡曲では小鳩がほろほろと泣いている。

なんかすごくスッキリした気分。
そこで今回はホロホロ鳥を食べに行くことに。
アフリカ原産のこの鳥はほぼアフリカ全土に棲息し、
ほかの大陸には野生種がいない。
英語名をギニアファウル(ギニアの鳥)、
仏語名をパンタドといい、
フランス料理では大いに珍重される美味なる鳥で
個人的には七面鳥などより、ずっと好きである。

やって来たのは有楽町のガード下に近い「大雅」。
当夜の相棒は当コラムでおなじみのK石クン。
店は彼の職場から徒歩3分の距離にある。
この店に来るのは驚くなかれ実に30年ぶり。
以前、この界隈でサラリーマンをしていた頃に
何回かランチで訪れていて、それ以来なのである。

キリンラガーの中ジョッキと一緒に
お通し三品盛りが運ばれた。
その内容はといえば、冬瓜の煮もの、
梅肉を添えた鱧のおとし、
そして帆立だろうか、貝ヒモの佃煮であった。
いずれも凡庸にして、特筆すべきことはナシ。

ホロホロ鳥を使った料理の前に
葉わさびのひたし、鯨のベーコン、
それにかつおのたたきを
ニンニクスライス付きでお願いした。

          =つづく=

 
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2009年8月27日(木)

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