第827回
いいオンナを食っちゃいました!(その2)
溜池の交差点から虎ノ門方面に向かう途中にある
仏料理店「ビストロ ボンファム」にて
オマール海老とフォワグラを合わせた一皿を食べ終えた。
グラスにはスオイ・バローロが注がれた。
ネッビーロ種特有の深い、
それでいてキレ味鋭い香りが鼻腔を刺激する。
J.C.はサカナだろうが肉だろうが
ワインはほとんど赤一辺倒。
それもフレンチならボルドーよりブルゴーニュ、
イタリアンならトスカーナよりピエモンテだ。
要するにピノ・ノワールとネッビオーロが好きなのだ。
そうそう、飛びっ切りの「いいオンナ」であった。
ここからは昨日の続きで
彼女が視界に入ってきたところから――。
身に着けているのは
黒い小さな水玉の散った黄金色のドレス。
色白の素肌が小麦色に灼けている。
カタチのよい両の乳房は魅力的だが
お互いの距離がずいぶん近いように見える。
谷間のない乳房というのは珍しい。
エッ? くだらねェこと、くどくどと書いてねェで
早いとこ見せろ! ってか?
いいでしょう、いいでしょう、お見せしましょう。
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こんがり焼かれた舌平目のボン・ファム風
photo by J.C.Okazawa
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どうです? 艶っぽいでしょう?
2枚のマッシュルームの乳房が判りにくいかな――。
これのどこが「いいオンナ」なんだ? ってか?
今日の読者は、質問及び文句が多いな。
実はこの料理名が「舌平目のいいオンナ風」なんざんす。
仏語でボン・ファム(bonne femme) は
素敵な女性、あるいは人柄のよいお婆ちゃん、
などといろいろに訳されるけれど、
J.C.は「いいオンナ」というのが
一番しっくりくると思っている。
若い頃、ホテルでアルバイトをしていたとき、
何度この料理をサービスしたことか――。
情が移ってしまっていて、もちろん大好物の一つである。
白ワイン・生クリーム・バター・シャンピニョンの香りが
サカナの中ではもっとも繊細な食味を持つ舌平目に
しっかりまとわりつき、もう美味しいの、なんの。
網笠茸のソースをあしらった
シャロレ種仔牛のロティには不満が残った。
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この赤さでは仔牛と呼びがたい
photo by J.C.Okazawa
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すでに乳以外のものを口にしている肉の色だ。
リードヴォー(仔牛の胸腺肉)のアルジャントゥイユ風は
リードヴォー自体がよくとも
赤ワイン系のソースが仔牛とかぶってしまい、失敗の巻。
ちなみにアルジャントゥイユは
クロード・モネゆかりの風光明媚なセーヌ河畔の地だ。
「いいオンナ」のおかげもあり、
トータルでは満足のいく晩餐だったが
パンには苦言を呈しておく。
最初にサーヴされたシャンピニョンはすばらしかった。
だが、お代わりのバゲットがガクッとおちて
もう、どうにもならない代物。
天国から地獄に突き落とされた心境であった。
【本日の店舗紹介】
「ビストロ ボンファム」
東京都港区赤坂1-3-13
03-3582-0200
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