「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第828回
この夏一番 うれしい出会い

なんだかこの夏は不完全燃焼で終わってしまった。
ちっとも夏らしくない夏であった。
梅雨が明けたんだか、明けなかったんだか、
よく判らないうちに土用波が立ったかと思うと、
いきなり秋風が吹き始める始末。
夏をこよなく愛する者には、はなはだ不満だ。

それよりも季節はずれの豪雨に
襲われた被災者の艱難辛苦を思えば、
自分の不満などまったく取るに足らないもの、
被災された方々には心よりお見舞いを申し上げたい。

不順な天候のせいで今年の夏は
好きなビヤガーデンにただの一度も行っていない。
こんなことはここ10年なかったことだ。

8月初旬のとある日。
「週刊現代」の取材で
築地「新三浦ガーデン」の親子丼のあと、
今度は月刊誌「めしとも」の取材で
小網町「桃乳舎」のナポリタン。
お腹をスカスカにしておいても2軒回れば満腹だ。

腹ごなしにちょいと歩こうと思い、
人形町・浜町を経て柳橋を渡った。
神田川の水面に反射する陽光がまぶしい。
「そういやぁ今年は、ビヤガーデンもそうだが
浅草『初音茶屋』のかき氷もまだだなぁ・・・」
そんなことをぼんやり思いながら
差し掛かったのは柳橋の甘味処「にんきや」。
甘いものに興味を示さないJ.C.が
何の因果かふらりと入ったのはおよそ2年前。
そのときは、あんずみつ豆を食べ、
赤えんどう豆の量に四苦八苦したのを覚えている。

店先に「氷」の旗がはためいているわけでもなし、
どうせかき氷はないだろうと思いながらも、
引き戸を開けて訊ねてみた。
すると地獄で仏とはこのことで、できるとおっしゃる。
歓び勇んで入店し、品書きを拡げたら
ありました、ありました、かき氷は全部で8品目あった。
ただし、そのほとんどが、あずき系であとは宇治だけだ。
さすがに甘味の老舗、いちごやメロン、
はたまた、ミルクやカルピスはおいていない。

目に留まったのは、氷しるこ(700円)と氷あずき(600円)。
ほほう、そういうことか。
これは訊かなくとも容易に想像がつく。
汁粉に漉し餡の御前と粒餡の田舎があるがごとく、
氷しるこのほうは漉し餡仕立てなのだろう。
こいつは珍しい。
しかも氷あずきに100円上乗せのプレミアムだ。
迷わず注文した。

一匙すくってすぐに、舌先と脳天に衝撃が走った。
浅草「初音茶屋」のそれに似て、氷がキメこまかい。
容器の底の漉し餡を口元に運んで再び衝撃。
「旨い!! 何じゃこりゃあ! 旨すぎるぞ!」
匙の上げ下げの速度が急激に増している。
たとえて表現するなら、水羊羹のフレッシュジュース。

漉し餡とかき氷の相性に瞠目
photo by J.C.Okazawa

そうだ、J.C.は子どもの頃からアンパンだって
粒餡より漉し餡派だったもの。
この夏一番の出会いは「にんきや」の氷しるこでキマリ。


【本日の店舗紹介】
「にんきや」
 東京都台東区柳橋1-3-12
 03-3851-1002

 
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2009年9月4日(金)

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