「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第829回
30年間 変わらぬ味(その1)

自宅の近所のビストロで出会って以来、
たまに一緒に飲む機会に恵まれる友人の一人に
A薙クンという人物がいる。
若者ともオジさんともつかぬ、
年齢不詳にして不思議なキャラの持ち主でもある。
あとで判ったことだがA薙クンは
当コラムにたびたび登場するハーピスト、
Iアサンの旦那のKチャンの部下であった。
奇遇というべきか、世の中はまことに狭い。

ある夜、彼と飲んでいて
ひょんなことから話題が房総の漁師町・千倉に及んだ。
以前、お互いに千倉の地で旨いうなぎに
出会ったという共通の体験をしていたことが判明する。

J.C.が千倉の町を訪れたのは1979年の夏。
早くも丸30年の月日が流れている。
A薙クンのほうはほんの数年前のことらしいが
うなぎ屋の屋号を覚えていないことでは
二人とも一致していた。

それでもあのとき食べたうな重の味は
強く印象に残っている。
子どものときに食べたうなぎの味がしたからだ。
長野市の生家でたびたび出前を取った店のうなぎに
よく似た味だったのである。
ちょいと下世話な感じのするタレがそっくりで
懐かしさに鳥肌が立ったのを今でも覚えている。

無性に千倉のうなぎが食べたくなり、
いっそのこと、出掛けようということになった。
そうはなったものの、男二人で行っても仕方がない。
どうせなら参加者を募り、
1泊して近辺の観光も兼ねてしまおうと――。

すぐに集まったのは総勢7名。
われわれ二人のほかは、前述のIアサン。
彼女の教え子のサニーとR絵チャン。
J.C.の高校の同窓生、ラガーマンのN田クン。
そして第825回の当コラム、
「立石の巻」にも登場した読者のW辺サンだ。

土曜の正午に柳橋のたもとに集合して、いざ出発。
途中、御宿の浜辺「月の沙漠」で一憩後、
落ち着いた宿は安房小湊の「三水ホテル」。
観光スポットとして有名な
鯛ノ浦行きの船着場のすぐ隣りにあった。

ホテルの裏手が港に面していて
その軒先にはいくつものつばめの巣が掛けられ、
明日にでも巣立ちそうな子つばめたちは
飛翔の稽古に余念がない。
飛び立っては舞い戻り、舞い戻っては飛び立つ。
チェックイン後、独り外に出たJ.C.は
飽きもせず、子つばめに見入っていた。

8月初日に解禁となった伊勢海老が
夕餉の食卓を飾っている。
持参した本わさびでやる刺身はよかった。
しかし、伊勢海老入りの鍋はいただけない。
宿の料理は何でもかんでも味付けがやたらに甘いのだ。
食糧難の時代、当地は砂糖欠乏症にでも襲われたのだろうか。

             =つづく=

 
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2009年9月7日(月)

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