「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第830回
30年間 変わらぬ味(その2)

旅先の常でその夜はまたカードに興じて半徹夜。
A薙クンとサニーだけは早朝から
晨朝法話(しんちょうほうわ)を拝聴するため、
ホテル前の誕生寺に出向いて行った。
誕生寺は日蓮聖人ゆかりの寺である。
日蓮の弟子の日家が聖人生誕の地に建立した古刹は
1703年(赤穂浪士討ち入りの翌年)の大津波にあい、
現在地に移転されている。

一っ風呂浴びてはみたものの、
寝不足で食欲がない中を何とか朝の食卓へ。
昨夜の夕食に引き続き、
再び甘い味噌椀のおかげで目が覚めた。
こういうときはショック療法に限る。
しらすおろしと茶碗蒸しでごはんを軽く1膳。

チェックアウト後は
南房総市・白子のローズマリー・パークへ。
パーク自体もさることながら
ゲート前の朝市に目が留まった。
新鮮な野菜や果物が破格の値段で即売されている。
天候不順のせいで高値の続く野菜がタダみたいだ。
知らず知らずのうちに、両手いっぱい買い込んでいた。
ジューススタンドでは搾りたての夏みかんジュースが
1杯たったの100円。
あさましくもJ.C.は立て続けに2杯飲んじゃった。

いよいよ小旅行のハイライト、千倉の町である。
何もない狭い町のことで屋号など判らなくとも
目当てのうなぎ屋はすぐに見つかった。
その「天乃家」は近所に移転していたが
旧店舗の記憶をたどりながら
店のスタッフと言葉を交わし、
この店こそ、あの店であることを確信。
4人掛けのテーブル2卓を4名と3名に分かれ、
全員がうな重の(並)を注文しておいて
ロートルの4人組はさっそくビールだ。

つまみはマンボウの味噌煮と〆さば。

珍味マンボウの腸の味噌煮
photo by J.C.Okazawa


脂ノリノリの〆さば
photo by J.C.Okazawa

どちらもまことにケッコウ。
殊に〆さばは酢が強めのJ.C.好み。
N田クンやW辺サンはもっと酢の浅いのがよいという。

待つこと20分。うな重が運ばれた。

うな重(並)はうなぎ3/4尾分
photo by J.C.Okazawa

見るからに蒸しよりも焼きが強そう。
ごはんのよそい方からして都内の老舗とは違い、
ワイルド感にあふれている。

何せ、30年ぶりに再会するうなぎのこと。
深く息を吸って呼吸を整え、
歴史的な一箸を蒲焼きに差し込んだ。
まずは一口舌に乗せ、
二、三度咀嚼(そしゃく)してみる。
う〜む、これこれ、紛れもないあのときの味だ。
30年前とちっとも変わっちゃいない。
下世話な甘みが焼き目のこんがり感とマッチする。

この間、少なく見積もったとしても
月に一度はうなぎを食べているから計360回。
まったく出会わなかったタレの風味が
今ここによみがえった。
目頭(めがしら)が熱くなり、涙までにじんできた。
おっと、それは〆さば用に
自分ですりおろした生わさびが利いたのでした。


【本日の店舗紹介】
「天乃家」
 千葉県南房総市千倉町瀬戸2910
 0470-44-0569

 
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2009年9月8日(火)

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