「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第832
肉屋の2階の肉団子

最近、というわけでもないが
東京の街々でちょくちょく見かけるのは
鮮魚店直営の和食店や定食屋、
精肉店直営のすき焼き屋やとんかつ屋、
あるいはステーキハウスである。

効率のよい商いというべきで
商売上のリスク軽減にも寄与している。
客側も割安感を感じるし、
とんでもない料理にぶつかる不測の事故の
回避にもつながっているようだ。

好天気に恵まれたある日の散歩の道すがら。
上野の山から不忍池のほとりに降りて
裏道を歩いてゆくと善光寺坂の途中に出た。
上野桜木の丘から根津の谷間に下ってゆく、
言問通りの坂である。

何度か訪れた「中華オトメ」のすぐそばに
2軒の古い精肉店を発見した。
かたや、俳優の中尾彬が事務所のスタッフのために
メンチカツを何十個もまとめ買いしたという店。
こなた、直営かどうかは判然としないが
2階に肉料理のレストランを擁する店。
事情通に訊いたら、根津の交差点の周りには
多くの古い精肉店があるとのこと。
そういえば隣り町の谷中もそうだった。

昼めしを食べるにはちょうどよい頃合い。
あまり深く考えずに肉屋2階の「鉄兵」に上がった。
メニューを見ると牛肉の焼きもの御三家が揃っていて
バター焼き・カルビ焼き・生姜焼きとあった。
ほかにも牛チーズ焼き・ステーキ丼があり、
豚肉メニューは生姜焼きのみで
牛サーロインと牛ロースのステーキ定食も用意されている。

メニューの片隅の肉団子定食に目が留まった。
中華料理店では目にする肉団子もこういう店では珍しい。
ましてや肉団子定食なんて
記憶をたどっても注文した覚えがまったくない。
おそらく never ordered before in my life だろう。

よし、これに決めた!
定食が出来上がるまで肉団子の思い出を一くさり。
小学生から中学生の頃、しばしば母親が
近所の東武ストアで「銀座アスター」の肉団子を買ってきた。
そのせいであの肉団子は「おふくろの味」ではないが
「おふくろにまつわる味」になったのである。
今食べても味がまったく変わらないのはエラい。

登場した肉団子定食はかなりいい感じ。

バランスよく完成度も高そうだ
photo by J.C.Okazawa

ほう、5個付けとはボリューム十分じゃないですか。
キャベツだけでなく、トマトときゅうりの存在がうれしい。
マカロニならぬペンネサラダの小鉢に、
豆腐味噌汁にも三つ葉が散らされている。
きざみ沢庵はおざなりだが、それは許す、許しましょう。

だが、だがですよ。
肝心の肉団子をパクッとやって
箸をポロリと落としそうになった。
目は点にはならずとも、キビ団子くらいに縮んだはずだ。
団子から完全に旨みが抜け落ちている。
沢庵は許せても、旨みのもれた肉団子は
いくら温厚な性格の持主のJ.C.も、ちょいと許せません。


【本日の店舗紹介】
「鉄兵」
 東京都文京区根津2-15-15 2F
 03-3824-4919

 
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2009年9月10日(木)

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