第836回
桐生よいとこ 一度はおいで
去年の8月に群馬県・前橋を訪れた。
今年の8月は前橋よりも
街並みに風格があるという桐生に赴いた。
桐生の街が県庁所在地の前橋を凌駕するのは
戦災に遭っていないからである。
和食店や鮨店の場合はそうでもないが
レトロな定食屋や洋食屋、
はたまた中華料理店にはめっぽう弱いJ.C.のこと。
そんな店々の宝庫となれば、一日中歩き回っていても
飽きることがないのではないだろうか。
灼熱の陽射しが首筋をジリジリと照りつける正午前。
桐生駅に降り立って真っ先に向かったのは「芭蕉」なる店。
坂口安吾の終焉の地ともなった桐生で
彼も通ったという洋食屋がここ。
 |
ゆがんで見える外観にめまいを覚えた
photo by J.C.Okazawa
|
昭和12年に開業したときのままだという。
 |
店内も暗くて牢屋みたい
photo by J.C.Okazawa
|
目が慣れるまで少々時間が掛かった。
キリンラガーの大瓶と馬小屋カリーセットを頼む。
 |
サラダ付きの馬小屋セット
photo by J.C.Okazawa
|
印度カリーより馬小屋が辛口だと聞いてこちらにした。
何の変哲もない、ごくありふれたカレーライスには
なぜかピーナッツが入っている。
そこだけはユニークでも、何だかなぁ・・・。
店内には棟方志功の版画があるそうだ。
それもぼんやりしていて観るのを忘れた。
ハナシの種に一度訪れればじゅうぶんという位置づけの店。
暑いさなか徘徊に徘徊を重ね、汗びっしょりになりながら
夕めしどきまで時間を費やす。
歩いた距離はゴルフなら27ホールはあったろう。
渡良瀬川の向こう岸のまぶしい西陽(にしび)を
手びさしでさえぎりながら
「立田野食堂」の暖簾をくぐった。
 |
これは入らんワケにいかない
photo by J.C.Okazawa
|
店内もまたスゴい。
 |
椅子もテーブルも品書きもたまらん
photo by J.C.Okazawa
|
 |
この灰皿に涙もこぼれんばかり
photo by J.C.Okazawa
|
たった20円の星占い付き灰皿にはすでに中身が入ってない。
スーパードライの大瓶をゴクゴクやって
注文したのは、まず第一にもつ焼き。
煮込みもあったが、最近食べ過ぎているので避けた。
 |
野菜炒めみたいなもつ焼き
photo by J.C.Okazawa
|
あとはあじ天ぷら2枚付けだ。
量少なめの料理を廉価で提供してくれるのはありがたい。
話好きの女将さんに聞くところによると、
先代は東京・両国の甘味処で修業したのだそうだ。
銀座通りの「立田野」は遠縁にあたるとのこと。
ふ〜ん、あの「立田野」とねえ・・・。
店内が常連客で立て込んできたので、おいとまする。
この夜はもう1軒、町の中華屋によったが
それはまた近々、別の機会に紹介するとしよう。
【本日の店舗紹介】その1
「芭蕉」
群馬県桐生市本町5-345
0277-22-3237
【本日の店舗紹介】その2
「立田野食堂」
群馬県桐生市錦町1-6-30
0277-44-7212
|