第837回
浜田山再訪(その1)
社会派推理小説の始祖、
松本清張が棲んだ浜田山。
その町の中華料理店「しむら」を紹介したのは
1ヶ月半ほど前のこと(第801&802回参照)。
あれからたいして月日は流れていないが
再び浜田山に出掛けた。
2年ほど前に訪れて印象がよかった
居酒屋「和田屋」の再チェックがその目的である。
月刊誌で煮込みのコラムを担当しているので
常日頃から大衆酒場・居酒屋はもちろんのこと、
食堂・焼き鳥屋を問わず、あったら試食を重ねている。
食の縄張りは下町だが、たまにはホームを離れて
東京の北・西・南部に位置する郊外区からも1軒、
ピックアップしようと考えたのだった。
前回の訪問時にはもつ焼きがよかったので
これならもつ煮込みも期待できそうだと踏んだわけだ。
ツレは大手中華外食チェーンに勤める料理人。
浜田山に近い荻窪の住人につき、非番の彼女を誘った。
煮込み豆腐と一緒に焼きとんを何本か注文する。
カシラとハツは塩、レバーとシロはタレである。
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練り辛子を添えた煮込み豆腐
photo by J.C.Okazawa
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腸壁にビッシリと付いた脂肪は
これが牛もつであることを実証している。
う〜ん、悪くはないんだけど、期待が大きかっただけに
連載に登場してもらうかどうかは微妙なところだ。
塩でお願いした焼きとんのカシラとハツには
ニンニク味噌も添えられていた。
煮込み同様にこれまたじゅうぶんに楽しめるものの、
どうしても台東・墨田・葛飾あたりの
ハイレベルな店と比較してしまう。
となると、やはり城北・城西地区は分が悪い。
野菜好きの彼女のために
ゴーヤチャンプルを追加して早めに切り上げた。
2軒目は駅の近くの「たんたん亭」。
肉と海老の2種類あるワンタンが自慢のラーメン店だ。
J.C.自身はワンタンよりもチャーシューが
ここの一推しだと信じて疑わない。
3軒目を頭の片隅に刻んでいるため、
ここではワンタンスープとチャーシューメンを。
肉と海老のワンタンが5つずつ入ったワンタンスープは
いわゆるミックスワンタンメンの麺抜き。
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白っぽいのが海老ワンタン
photo by J.C.Okazawa
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魚介系のスープのおいしさは相変わらずである。
ワンタンは多少クセのある肉よりも海老が好みだ。
さて、煮豚ではない、焼き豚を使ったチャーシューメン。
実はこの店でこのメニューを注文するのは初めて。
というのも半世紀以上生きてきた身ながら
かつてチャーシューメンを注文したことは
ほんの2〜3度しかないのだ。
ここ30年はまったく記憶にないくらい。
もっとも忘れっぽいからどこかで頼んでいるかもしれない。
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焼き豚が6枚並んだチャーシューメン
photo by J.C.Okazawa
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二人でシェアはしたものの、3枚もあって
どうやらありがたみが薄れてしまったようだ。
通常のラーメンみたいに、たった1枚のチャーシューを
大切に味わってこそ、その旨みがじんわりと
舌に迫り来るものなのであろう。
でも、やっぱりおいしかった。
=つづく=
【本日の店舗紹介】その1
「和田屋」
東京都杉並区浜田山2-24-8
03-3329-3917
【本日の店舗紹介】その2
「たんたん亭 浜田山店」
東京都杉並区浜田山3-31-4
03-3329-4061
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