第839回
富士山を拝みに出掛けて(その1)
自慢じゃないが、登山とスキーにはまったく縁がない。
そのわけは二つあって、まず荷物を持つのが嫌い。
そして寒いところが嫌い。
これじゃまったくハナシになりやせんぜ。
したがって富士山に登ったことはない。
♪ 富士は日本一の山 ♪
と、歌われなくともその美しさは認識している。
東海道新幹線の車窓や
関西方面への行き帰りの飛行機から
何度も拝んでいるからだ。
何かの拍子にふと、富士山が見たくなった。
それもなるべく近くからがよい。
新宿駅から富士吉田に向かうか、
東京駅から富士宮を目指すか、
少々迷った末に乗り込んだのは熱海行きのアクティー。
西南西に進路を取ったのだった。
東京駅では亀戸の名店「升本」の駅弁を買い込んだ。
ボックス席ではないので列車が走り出しても
弁当を開くチャンスに恵まれず、
どうにか開けられたのは
熱海で乗り換えたあとの沼津を過ぎてから。
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「升本」の新天神弁当は1000円
photo by J.C.Okazawa
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朝から何も口にしていないことが拍車を掛けて
とにかくおいしくいただいた。
東京駅の駅弁は最大手の「NRE」のものよりも
「マコト」や「常盤軒」が調製した弁当のほうが
ずっと秀逸なのである。
何事も大きくなりすぎて権力と癒着すると
腐敗の道をたどると言ったら叱られちゃうか。
富士駅で再び乗り換えて到着したのは富士宮。
曇りがちの日のことで目当ての富士の高嶺は
うっすらと霞む程度にしか見えない。
仕方がないから名物の富士宮焼きそばでも食べるとしよう。
浅間大社の境内にある「ここずらよ」に直行だ。
すると目下普請中につき、屋外での仮店舗だった。
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具は、油カス・イカゲソ・キャベツ
photo by J.C.Okazawa
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ご覧のようにたっぷりのイワシ粉が掛けられている。
魚粉は好きではないから、コシのある麺の食感だけを楽しむ。
その後、浅間大社裏の岩肌からこんこんと湧き出る
湧き水をありがたくいただいた。
湧玉池には虹鱒が群れを成して泳いでいる。
珍しいアルビノも数匹見ることができる。
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とても虹鱒には見えない
photo by J.C.Okazawa
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ひょいと見ると、
虹鱒の群れる冷水に浸かっているワン公がいるではないか。
やっぱり犬は寒さ、冷たさに強いのだな。
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どこか笑える飼い犬と飼い主であった
photo by J.C.Okazawa
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この小旅行の名目は富士山の雄姿を拝むことだが
本当の目的は富士宮焼きそばのほかにもう一つ、
吉原の「つけナポリタン」なのである。
富士宮の焼きそばの顰(ひそ)みに倣って
吉原が町起こしに知恵を搾ったご当地名物がこれだ。
いわゆるラーメン界で一世を風靡しているつけ麺の
ナポリタン・ヴァージョンなのだそうだ。
そんなのって、アリなのかい?
=つづく=
【本日の店舗紹介】その1
「升本」
東京都江東区亀戸4-18-9
03-3637-1533
【本日の店舗紹介】その2
「ここずらよ」
静岡県富士宮市宮町1-1
0544-24-2544
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