「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第842回
東大生と共に明治より(その1)

本郷の東大正門前に
明治の昔から暖簾を掲げる定食屋がある。
店のキャッチは「東大生と共に明治より」。
何回か出掛けているが
実はあっても味はイマイチという印象が残って、
自著「古き良き東京を食べる」では
「名店二百選にあと一歩の優良店」として
カテゴライズするにとどまった。

数ヶ月前に読者のH彦サンから
推奨のメールをいただいたので
ある日の午前11時05分、開店間もない時間に赴いた。
今日の相方は神保町「やまじょう」のMり嬢。
彼女にとっては出勤前の昼めしである。

入店して真っ先に成すべきミッションは食券の購入。
定食屋だからそれなりのメニューがひしめく中、
売り場のオバちゃんに
「さァ、何にします?」と詰め寄られても
そう簡単には決めかねる。
空いてる時間ならともかく、
ほかの客に背後に着かれたら
おちおち食べたいものを選んでなんかいられない。
この悪システムだけは解消してほしいものだ。

これは人気ラーメン店にも言えること。
醤油・塩・味噌の3種が揃い、
ワンタン麺やチャーシュー麺があり、
様々なトッピングが用意されてる店で
券売機を前に焦りまくる客の気持ちを
世の店主どもは考えたことがあるのだろうか。
人件費を節約できる上に
勘定の取りっぱぐれの心配もない、
まったくもって店側に都合のよいシステムながら
そのシワ寄せはすべて客側に及ぶのだ。

注文品は、J.C.が豚生姜焼き定食(880円)。
Mりチャンは日替わり定食(800円)。
日替わりはランチタイムに限り、
50円引きの750円となる。
しらすおろしや納豆などのサイドオーダーに
目が留まったものの、
ここの定食類には小鉢が付くはずなので自重した。

窓際の席に落ち着くと、
先客は隣りの卓の幼児を連れたお母さんのみ。
グズる男児を母親があやしている。
この店の客らしくないタイプなので、いささか気になった。

どういうわけか、われわれの定食が
親子連れのそれより先に来た。
接客のオバちゃんが男の子に
「もうちょっと待っててね」と、申し訳なさそうだ。
何だかこちらもこの子にすまないような気がしてきた。
子どもの瞳がわれわれの定食に釘付けなんだもの。
隣りは何を頼んだものだろう。
時間が掛かるものといえば、焼き魚だろうか。
案の定、ほどなくさば塩焼き定食が運ばれて
ホッと胸をなで下ろす二人であった。

            =つづく=

 
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2009年9月24日(木)

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