「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第841回
チキンラーメンの「点と線」

日清のチキンラーメンが生まれて早や半世紀。
その商品がいまだに健在なのは驚きに値する。
一体これまでに何杯食べたことだろう。
今となっては数えるすべもない。
今日はそのチキンラーメンではなく、
それとは別のチキンラーメンの話。

静岡県・吉原の町起こしのために発案された
つけナポリタンについては昨日のコラムで紹介した。
つけナポを食べたあと、吉原本町の商店街をさまよった。
居酒屋を探し求めていたのである。
ところが、意に沿う店がなかなか見つからない。
飲食店の絶対数が限られているのに加えて
琴線にふれてくる佳店がまったく見当たらない。
東海道本線の吉原に出たほうがよさそうだと考え、
岳南鉄道のローカル色豊かな電車に乗り込んだ。

5分そこそこで吉原駅に到着。
さっそく駅員さんに訊ねる。
「駅の近くの飲み屋街はどの辺ですか?」
「エッ? このあたりは何にもないですよ」
「そば屋かラーメン屋は?」
「本当に何にもありません。店は1軒もないです」
「駅員さんたちが飲んだり食べたりするときは?」
「わたしらみんな、本町まで行くんですよ」
「エエ〜ッ! 今そこから電車に乗って来たんですけど」
「あちゃ〜!」

何てこったい。
「俺ゃ、こんな町、イヤだぁ〜!」
こいつはアカンと沼津か熱海にでも行くつもりで
独りさみしくプラットフォームにたたずんだ。

夕闇迫る吉原の駅
photo by J.C.Okazawa

結果、降り立ったのは沼津でも熱海でもなく三島。
「ノーエ節」で有名な、あの三島である。
すでに日はとっぷりと暮れている。
「もうどうでもいいや」と無作為に入った店は
いかにも町の中華屋さんといった感じの「文月」。
まずはビール、そして煮込みを注文すると、
もつのほかに大根・にんじんが入って
見るからに田舎臭いヤツ。
何だか気が抜けて思わずつぶやいていた。
「塩ラーメンください」

8分後、ラーメンに驚愕するJ.C.を見ることができた。
シコシコ麺もさることながら
鳥ガラの出汁がジュワ〜ッと出切ったスープがすばらしい。
これぞ本物のチキンラーメンである。
「こいつはスゲエや!」――心の中で叫ぶ自分がいた。
と同時に脳裏によみがえったのは
数日前に桐生を訪れたとき(第836回参照)、
食堂「立田野」のあとに寄った「秀峰」で食べたラーメン。
「秀峰」のラーメンは塩味スープのみで
これまた鳥ガラの出汁が強烈に出ていたのである。

群馬県・桐生と静岡県・三島。
たまたま立ち寄った2軒の中華料理店における
2杯のチキンラーメン。
たかだか1週間足らずのあいだに
生涯でもっとも印象に残るチキンラーメンに
2度も遭遇したのである。
遠く離れた2つの点が1本の線で鮮やかにつながった。


【本日の店舗紹介】その1
「文月」
 静岡県三島市一番町17-59
 055-972-6708

【本日の店舗紹介】その2
「秀峰」
 群馬県桐生市本町6-22
 0277-43-7880

 
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2009年9月23日(水)

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