第847回
このそばを食べて30年(その2)
千葉県・松戸市が誇る名店「そば処 関やど」で
少々不満の残るとりわさと大満足のあい焼きで
冷たいビールをやっているところ。
そばで締める前にもう一品、つまみがほしい。
海老か小柱のチョイスが利く天種もいいなァ。
濃い味のものならば、穴子佃煮か、にしん棒煮だろう。
ちょいと捻って小田巻蒸しという手もある。
小田巻蒸しはうどんが入った茶碗蒸し。
ここ数年あちこちで見掛けるようになった
巣ごもりに食指が動いた。
耳慣れない巣ごもりというのは
言わば、日本そばの固焼きそば。
当夜の相方は食べたことも聞いたこともないという。
それでは食べてもらうとしよう。
巣ごもりそばの発案者はいったい誰であろうか。
なかなかのアイデアマンといわねばならない。
百聞は一見に如かず、まずはとくとご覧あれ。
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小鳥の巣をかたどった巣ごもり
photo by J.C.Okazawa
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ポーションがきわめて小さいのに
値段のほうは鴨せいろうよりも高い1150円。
手間ひまが掛かっているから
人件費が価格に跳ね返ったのかもしれない。
あんかけの食材は鳥胸肉・小海老・竹の子・しいたけ。
そしてうずらの卵黄と木ノ芽がトップにちょこんと君臨。
涼やかにして凛々しい面立ちではないか。
この日はずっとビールで通すつもり。
そば味噌やあい焼きが目の前にあると、
どうしても日本酒が飲みたくなるが
巣ごもりならばビールにピッタリだ。
それでも中華料理の固焼きそばを連想させて
紹興酒のボトルがちらりと脳裏をよぎっていった。
おそらく巣ごもりは日本酒よりも
紹興酒のほうがシックリきそうだ。
うん、きっとそうだろうよ。
ここいらで締めのそばである。
「関やど」のそばは大好きで
さもなければ30年もつき合ってやしない。
ことにせいろうが一番だ。
大せいろうを1枚と
種モノのカレー南蛮をうどんでお願いした。
この店はうどんもイケるのである。
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まぜわさだけが玉にキズ
photo by J.C.Okazawa
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カレー南蛮にわさびはいらんやろ
photo by J.C.Okazawa
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せいろうはしなやかなコシを持っていながら
フワッとした食感をも兼ね備え、
ちょいとヨソでは類を見ない独特のものだ。
甘さを閉じ込めたつゆもよい。
カレー南蛮の具は鳥もも肉と白ねぎのみ。
うどんは柔らかいのにモチッとしたかみ応えを残し、
これまた上デキであった。
もしもこのそば屋が都心にあったら
あまたのそば好きが放ってはおかないだろう。
いつの間にか情が移ってしまったせいか、
「室町砂場」や「かんだやぶそば」よりも
ここへ来ると落ち着いた心持ちになれるJ.C.である。
【本日の店舗紹介】
「そば処 関やど」
千葉県松戸市本町7-2
047-361-0235
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