第855回
東海道 鮨と鰻の 食べ歩き(その2)
真鶴の「葵寿司」でにぎりと手打ちそばを楽しんだあと、
港の周りを散策して、うなぎの街・三島に向かう。
途中、熱海で下車し、駅前のアーケードでみやげ物を物色。
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熱海に若い女性のグループは珍しい
photo by J.C.Okazawa
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三島に着いたのは午後3時過ぎ。
前回は1ヶ月ほど前にチラッと立ち寄り、
駅近くの「文月」で鳥の出汁が出まくりの
塩ラーメンに舌鼓を打ったものの、
市街を徘徊する時間には恵まれなかった。
まずは有名な三島大社の参詣から。
初めて歩く三島には富士山の雪解け水を
源泉とする湧水がここかしこにせせらいでおり、
独特の風情をかもしていて、実にいい街である。
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大社は聞きしに勝る風格をたたえていた
photo by J.C.Okazawa
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三島と言えば、一にも二にもうなぎ。
水に恵まれた街ではあるが、港もなければ海もない。
だからこその川魚・うなぎなのだろうか。
目星をつけたのは、三島随一とほまれの高い「桜家」。
午後4時頃に通りかかると、
店先に下足番のオジさんがたたずんでいた。
訊けば5時の開店だという。
知らない街で小1時間つぶすのは造作もないこと、
ぶらり界隈を歩き回った。
舞い戻ったのは5時15分。
店内の雰囲気は宿場町の老舗といった感じ。
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古い設いに若い接客係のミスマッチが新鮮
photo by J.C.Okazawa
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サービスに当たるのはいずれも若い娘さんたちで
熟女の気働きには欠けても丁寧な接客振りに好感が持てる。
ビールをお願いして、おもむろに品書きを開いた。
ありがたいことに、うなぎ丼とうなぎ重箱が選べて
ともに2620円と3360円、そして重箱には4200円がある。
どんぶり信奉派のJ.C.は迷わず2620円のうなぎ丼だ。
この店では(並)だの(上)だのと下世話な呼び方はしない。
うなぎの枚数で2枚・3枚と呼ぶ習わし。
このほうがスマートで東京の老舗も見習ってほしい。
したがってJ.C.は2枚のうなぎ丼を注文したことになる。
うなぎ丼は新香(きゅうり・大根・たくあん)と
肝吸いを従えて蓋付き陶器のどんぶりで登場した。
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いいですねェ、どんぶりは!
photo by J.C.Okazawa
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手は合わさなかったが、拝むようにして蓋を開ける。
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輝きもさることながら、香りに悩殺された
photo by J.C.Okazawa
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舌が味わう前から、目と鼻がその美味に太鼓判を押している。
蒲焼きはやや小ぶりのベストサイズ。
蒸しと焼きの塩梅も上々にして
ケレンのないタレはコク味を宿し、
サッと振ったうぐいす色の粉山椒がかぐわしい。
ここで白状すれば、いかに街の名物といえども
わが東京の下町には到底かなわぬものと
勝手に決めてかかっていた三島のうなぎ屋の水準。
とんでもなかった、ワタシが悪かった。
もしもこの店が東京にあったら、それこそ大変。
都内のうなぎ地図が書き換えられること必至だ。
味・接客・雰囲気・CP、そのすべてがすばらしい。
赤坂の「J」、麻布の「N」、千住の「O」、
3軒が揃いも揃って「桜家」の後塵を拝することになる。
しっかりしておくれよ、東京のうなぎ屋さんヨッ!
【本日の店舗紹介】
「桜家」
静岡県三島市広小路町13-2
055-975-4520
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