「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第857回
もんじゃの町にワインを持ち込み(その2)

もんじゃの町・月島を訪れている。
行く先は牛もつ煮込みの佳店「げんき」だ。
ときに土曜日の午後3時半ちょっと前。
「げんき」は酒類持込み制につき、
もんじゃ屋が居並ぶ表通りの酒屋で
ビールの大瓶を購入した。
中瓶ではまだるっこしい。

グラスがない場合には
缶ビールのほうが飲みやすかろうが、
家からちゃんとプラスチックのコップを持って来た。
第一、ビールを缶から直接飲んでも旨くはない。
ビールはグラスに静かに注いでやってこそ、
初めておいしさが芽吹くものなのだ。

ビールを飲むときに手間ひま掛けて
クリーミィな泡を立てる人がいる。
正直いって、あれは好きではないな。
「キメこまかい泡がビールの味と香りをガードする」
――こう言う人を止めやしないが、やっぱり馬鹿みたい。
味と香りが抜けてゆくのを指をくわえて見てないで
そんなひまがあったら早く飲んじゃいなよ。
もともとビールってそういう飲みものですぜ。

それに泡を立てると著しく気が抜ける。
蓼食う虫も好きずきだから、どうでもいいことながら
J.C.は気の抜けたビールが大嫌いざんす。
と言いながらも炭酸の強い三ツ矢サイダーは
グラスに激しく注いで気を抜くんだから
われながらいい加減なヤツではありますな。

さてさて、もつ煮の「げんき」であった。
持参したのはプラスチックのコップだけではない。
スペインの赤ワインもブラ下げてきたのである。
銘柄はモンテ・オシーホ‘06年。

3時半の開店直後に到着した。
閉店時間の6時半までじっくり3時間も
ネバるつもりは毛頭ないけれど、
とにかく屋台同然の店先の丸椅子に腰掛けた。

最初に注文したのは3種ある牛もつ煮込みを1本ずつ。
ここの煮込みには串が打たれているのだ。

左からシロ・フワ・ナンコツ
photo by J.C.Okazawa

あっと言う間に3本が胃袋に収まる。
すかさずアンコールとともに玉子と豆腐も追加した。
合わせて5種類の盛合わせを「バージョン」と称する。
当店特有の意味不明なネーミングながら
稲垣潤一の名曲「ロング・バージョン」の
イントロ部分が脳裏を掠めていった。
「うん、あれはいい曲だったなァ」。
ともあれバージョンよりも
フルキャストのほうがしっくりくると思うのだが
月島には月島の流儀があるのだろう。

ほかにほとんどつまみ類がない中、
ハタハタと豆あじをあぶってもらう。

豆あじと呼ぶにはやや大きめ
photo by J.C.Okazawa

何の変哲もない干物たちがシンプルに旨い。
スペインの赤にも健気に寄り添った。

滞在時間は約50分でお勘定は1430円。
近場にてもう1軒、あるいは歩いて築地か門仲か。
八丁堀だってそう遠くはない。
大江戸線で浅草方面か麻布十番という手もある。
いずれにしろ、このまま帰るJ.C.ではないことは確か。
ここで帰るような腰抜けなら
このコラムを書き綴っちゃ、いませんや。


【本日の店舗紹介】
「げんき」
 東京都中央区月島3-8-6
 03-3531-5900

 
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2009年10月15日(木)

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