第867回
横浜にも下町がある(その3)
カリーの店「KIKUYA」を出たのは12時半。
夜の待合わせは17時だから時間はタップリある。
このまま野毛坂を上れば野毛山公園。
ほかにやることもないし、
公園内の動物園に行くことにした。
この日は祝日の上に、この動物園は入場無料。
園内は家族連れでにぎわっている。
無料のわりに動物たちが揃っているのはうれしい誤算。
キリンなんざ、子どもたちが差し出す緑の葉を
ムシャムシャ食べるものだから、あちこちで歓声が上がる。
巨大なアムールトラ(シベリアトラ)に驚いたり、
片足を失った黒ヒョウに不憫を感じたりしながら
2時間近くを過ごしただろうか、
S山サンと別れ、J.C.は独り黄金町方面へ降りてゆく。
方々を歩き回り、黄昏せまる野毛の町に舞い戻った。
今晩予定している中華料理屋「萬里」に赴くと、
年中無休のはずの店がなぜか臨時休業。
幸い、すぐそばの支店「萬里放題亭」が営業しており、
そちらを予約した。
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時代を感じさせるたたずまい
photo by J.C.Okazawa
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当夜のメンバーはみな中学や高校の同期生。
Iア夫妻とK木夫妻に
夫をほっぽり出して単身参加したW部サン。
Iア・K木の旦那とJ.C.はいずれ劣らぬビール好きだが
W部サンも女だてらに大のビール党なのである。
今宵ははたして何リットルのビールが
飲み下されるのか、まったくもって予想がつかない。
料理の初手は名代の餃子。
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別段、何の変哲もない
photo by J.C.Okazawa
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餃子よりも五目野菜炒めが好評。
子どものころに食べた町の中華屋さんの味がする。
適度な化学調味料がいかにも昭和30年代のもので
心なしか舌が喜んでいるのを実感した。
続いての小海老と豆腐の煮込みも連続ヒット。
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こちらはほどよい片栗粉のトロみが身上
photo by J.C.Okazawa
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餃子には肩を透かされたものの、
野菜炒めが失点を補って余りある。
週間半額サービスの台湾産紹興酒と
同じく半額の鳥唐揚げは2人前お願いし、
ジャンジャン飲んでバカスカ食べる。
遅ればせながらの蒸し鳥と皮蛋(ピータン)に
定番の五目煮込み(八宝菜)と、中継ぎ陣が大活躍。
ただ、Iアサンの旦那が勘違いして頼んじゃった
海鼠(なまこ)と野菜の醤油煮込みが初めてのハズレ。
しかもこれが最高値とあって、みんなからは非難の嵐。
気を取り直して春巻・酢豚・焼きそばを追加すると、
酢豚がなかなかの仕上がりであった。
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この店はオーソドックスな料理がよい
photo by J.C.Okazawa
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とにもかくにも、楽しい宴は終結に向かった。
2軒目は徒歩1分と至近のジャズバー「パパジョン」。
下町・野毛では知らぬ人とてない伝説のランドマークだ。
名物マスターは1980年3月の開業以来、
1日たりとも店を閉めたことがない。
J.C.の訪問はおよそ2年ぶりになる。
入店すると、マスターの姿が見当たらないので
息子さんに訊ねたら何と昨年の2月に
亡くなったというではないか。
女性好きのマスターのために今宵はキレイどころを
3人も連れて来たっていうのに・・・。
これでもう、彼に美空ひばりの「むらさきの夜明け」を
リクエストすることは二度とかなわない。
心に残るバーテンダーの一人でした。
【本日の店舗紹介】
「萬里放題亭」
神奈川県横浜市中区花咲町1-28
045-261-0909.
「パパジョン」
神奈川県横浜市中区野毛町1-49
045-242-9762
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