「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第868回
「青空」のゆくえ

歌手・いしだあゆみを話題にしたのはこの火曜日。
彼女のほかにもう一人、好きな女性歌手がいる。
中尾ミエ・園まりと三人娘を組んだ伊東ゆかりだ。
デビュー時から歌唱力に注目していたが
女としての美貌の開花は10年ほど経過してからだ。
歳を重ねるごとに美しくなる珍しいケースといえる。

カンツォーネやアメリカンポップスを歌っていたのが
「小指の思い出」でイメチェンしてブレイクする。
「恋のしずく」、「朝のくちづけ」、「誰も知らない」と
60年代後半から70年代前半にかけて
立て続けにヒットを飛ばした。
‘69年に出た「青空のゆくえ」という曲がある。
和製カンツォーネといった趣きで
ティンパニが効果的に使われ、
転調を繰り返すスケールの大きな名曲といえよう。

話変わって、銀座8丁目に「青空」という鮨店がある。
「あおぞら」ではなく、「はるたか」とプロナウンスする。
「すきやばし次郎」で12年修業したという親方が
3年前に開いた江戸前鮨の人気店である。

今月の初めに訪れた。
予約が取れたのは5時だから、一日二回転の一回転目だ。
クラブの同伴には都合がよくとも、普段使いに5時は早い。
銀座の鮨屋も世知辛くなったものだ。
ビールはキリン一番搾りの小瓶で、これはヨシとしよう。
初っ端に3種類の赤海胆が供された。
壱岐と唐津ともう1種、やはり九州のどこかだったが失念。
確か、「〜の島」と訊かされたように思う。
生海胆よりも瓶詰めの雲丹のほうが好きなので
J.C.は別段、うれしくも何ともなかった。

炒り銀杏をはさんで登場した蝦蛄(しゃこ)は加賀・七尾産。
絶滅の危機に瀕している江戸前とは違った風味がある。
身がふっくらと肉厚でこれは上物。
酒を芋焼酎の克(かつ)に切り替え、
気仙沼に揚がった戻りかつおをいただき、これが花マル。
炙りかます、いわしなめろう、このわた&このこ、
太刀魚味噌漬けと継いでにぎりへ。

順番に
すみいか・縞あじ・赤身・中とろ・大とろ・小肌・
赤貝あじ・新いくら・車海老・穴子・玉子

例によって赤字は特筆モノである。
厚めのすみいかは歯を入れるとパキッと音を立てた。
ほのかな赤み差す縞あじは八丈産の天然モノ。
まぐろは中とろの状態がもっともよかった。
木箱にカマとろの姿もチラリと見えた。
赤貝はもはや稀少となった三陸・閖上(ゆりあげ)産。
押しなべて満足のゆく極上のにぎり鮨が味わえた。

食後、少々もの足りなさを覚えるのは
この店独自の個性豊かな十八番が見当たらないこと。
何事も無難にこなすのが
師匠・小野二郎さんの流儀なのかもしれないが
すでにつまみの多彩さでは師匠を超えたのだし、
もっと踏み込んだシゴトを見せてほしい。
今後の「青空のゆくえ」に期待するとしよう。


【本日の店舗紹介】
「青空(はるたか)」
 東京都中央区銀座8-5-8銀座かわばたビル3F
 03-3573-1144

 
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2009年10月30日(金)

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