「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第871回
屋上ですする たぬきうどん

中学と高校が板橋区の東上線沿線だったので
当時から遊び場は必然的に池袋。
この街に馴れない人からは
ガラが悪くてイヤだなんていう声が上がり、
都内でも不人気をかこつ場所ではある。
ただ、長いことホームグラウンドにしていると
勝手知ったるわが街として情も湧くし、
数々の思い出も生まれるのだった。

昭和40年代、池袋の思い出スポットは
まず第一に東武デパートの8階(だったかな?)にあった
東武ムービーシアターである。
入場料がたったの100円だった。
しかも住んでいた東上線・中板橋の駅改札で切符を買うと、
片道電車賃20円込みで100円。
中学生にはうれしい割引となったものである。
ヨーロッパの名画を中心に
いったい何本の映画をここで観たことだろう。

もう1つ、西武デパートの屋上を挙げておかねばならない。
小遣いに不自由する学生にとっては
数少ないありがたきデートスポットだった。
ここから眺める新宿方面に
高層ビルが立ち並ぶ前のことである。

屋上デートの習慣がクセになったものか、
今でも女性と一緒のときには
相手を口説こうが口説くまいが
オシャレな空間より、高い場所のほうがシックリくる。
学生アルバイトを始め、金の回りがよくなってからは
もっぱら帝国ホテルにあったレインボー・ラウンジ。
日比谷通りを臨む北側の眺めがすばらしく、
走る車のヘッドライトとテールランプが
今も目に焼きついている。
エニウェイ、西武の屋上から帝国のラウンジとは
J.C.もずいぶんと出世をしたものだ。

ある日、「のみとも」のK木クンが
池袋西武の屋上に旨い立ち食いうどん屋があるから
一度、食べてみてくれというので
久々に思い出のデートスポットを訪れた。
この日はちょうど中学の同窓会が
東武デパートのバンケットホールで開かれる日。
パーティーではもっぱら飲むばかりで
料理に手をつけることがないから
軽くうどんの腹ごしらえというのは悪くない。

食事どきでもないのに「かるかや」は繁盛していた。
揚げ玉の量を半分にしてもらい、たぬきうどんをお願いする。
屋上だから店の前はオープンエアにテーブルと椅子。
けっして立ち食いではない。
セルフサービスながら客はおのおの好きな席で
勝手気ままに食べられるわけだ。
これが人気の大きな要因であろう。

うどん自体は太さ不揃いのザラリとした灰色の手打ち。
モチモチ感より粉々感が主張している。
つゆは一口目には凡庸さを感じたが
食べ進むうちにその良さが伝わってきて
しまいには飲み干したほど。
唯一、揚げ玉の油の匂いだけが嫌いなタイプで
もしも胡麻油の香りがほのかに立ってくれていたら
鬼に金棒だったのに、くれぐれもそこが残念である。


【本日の店舗紹介】
「かるかや」
 東京都豊島区1-28-1 西武池袋本館9階
 03-3981-0111

 
←前回記事へ

2009年11月4日(水)

次回記事へ→
過去記事へ 中国株 起業 投資情報コラム「ハイハイQさんQさんデス」
ホーム
最新記事へ