「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第873回
まっさかさまに 墜ちてメカジキ(その1)

もう15年以上も前のニューヨーク在住時のこと。
翌日に東京出張を控えていたある日、
同僚のマイケルが真顔でこう訊ねる。

「J.C.、アキナ・ナカモリって知ってるかい?」
「ああ、知ってるよ」
「彼女は日本で有名かい?」
「うん、日本のグラミー賞みたいなヤツ、
 2年続けて取ったんじゃなかったかな・・・」
「ほう、それはスゴいね」
「それはそうと何だよ? いきなり」
「ん? うん、いや、いいんだ」

翌日、日本へ向けて飛び発ったJ.C.は
無事に2週間の出張をこなしてニューヨークに戻った。
月曜の朝、オフィスに出勤すると、
くだんのマイケルが目配せをするではないか。
マーケットが開く8時前のことで
ディーリングルームを抜け出し、
裏手にある休憩室で落ち合った。

「J.C.、アキナ・ナカモリは本当に有名か?」
「お前も馬鹿だね、グラミー賞を取ったんだから
 有名だろうが!」
「実は・・・」
「どうしたの?」
「今、彼女、オレの自宅にいるんだ」
「ハァ? 何を言ってんだよ、
 頭がおかしくなったんじゃないの?
 アキナのポスターかCDでも、もらったんだろ?」
「違う、違う、本当にアキナのリアルが家にいるんだ」
「何だって! おい、おい、それってマジ?」
「うん、マジ、誓ってマジ!」
「ジーザス・○○○キング・クライスト!
 こりゃ、エラいこっちゃ」

翌日、さっそく明菜とご対面。
まっ、こちとら通訳兼ガイドみたいなもんだけど、
ソホーのレストラン、ミッドタウンのバー、
ハーレムのジャズクラブと
その夜は真夜中まで遊びまくった3人。
早い話が英会話の勉強のため、
ニューヨークに長期滞在する予定の明菜が
とある人の紹介でマイケル宅に
ホームステイすることになった次第。

あの頃は実によく遊んだものだが
彼女はカラオケに行っても
自分の曲を自分からは歌わなかった。
ところがどっこい、それを歌わせるのは実に簡単で
われわれ周囲の人間が「スローモーション」や
「セカンド・ラブ」や「ミ・アモーレ」を歌いだすと、
あまりの下手さに我慢できなくなくなった明菜が
しびれを切らしてマイクを取り上げ、
途中から歌い始めるのである。
作戦はいつもまんまと大成功。

J.C.のお気に入りは断トツで「十戒」。
スタッカート風に盛り上げてゆく、あの曲スジがいい。
その後出した「SAND BEIGE -砂漠へ-」や
「DESIRE-情熱-」も好きだ。

例によって前フリが長くなったが
「DESIRE」の中に
♪ まっさかさまに 墜ちてdesire ♪
        (作詞:阿木燿子)
という歌詞がある。

今回は馬喰町のインディアン・レストランで
まっさかさまに墜ちたハナシ。
2階から階段を転がり落ちたわけでもないし、
ましてや馬喰町だけに落馬したのでもない。
ともあれインド料理店「ダクシン」を訪問したのは
小雨まじりの冷たい夜のことだった。

           =つづく=

 
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2009年11月6日(金)

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