第874回
まっさかさまに 墜ちてメカジキ(その2)
中森明菜の「DESIRE-情熱-」よろしく
馬喰町の「ダクシン」でまっさかさまに墜ちた話。
事前の調査によると、かなり評判のよい店だった。
ロケーションはアパレルの問屋街。
飲食店の少ないエリアで夜はともかく
昼はかなりの客が押し寄せそうだ。
家賃が安いのかビル丸ごとの大箱レストランである。
マダムと思しきインド女性が
流暢な日本語で注文を取りに来た。
ここへ来る道すがら、
インド料理好きの相方と、すでに献立は相談済み。
ラムケバブ、チキンビリヤニ、オニオンドーサ、
フィッシュフライ、以上4品を注文する。
10分後に最初の一品、ラムケバブが運ばれた。
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繊細にして美しいラムケバブ
photo by J.C.Okazawa
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南インドの料理店と聞いていたので
もうちょっと粗い盛付けかと思っていたら
とてもお上品で意外や意外。
クミンの風味がよいアクセントになっている。
上々のスタートであった。
お次はチキンビリヤニ。
シンガポール赴任時代によくランチで食べたものだ。
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インド風炊き込みごはんのビリヤニ
photo by J.C.Okazawa
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これはずいぶん柔らかく仕上げられていて
汁なし雑炊といった趣きである。
その旨をマダムに伝えると、彼女はちゃあんと知っていた、
シンガポールのビリヤニはもっとドライであることを。
なかなかデキるオバちゃんだ。
ドーサは中に生オニオンが潜んでいる。
辛味を抜いているのか、あまり刺激を感じない。
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パンケーキというよりクレープですな
photo by J.C.Okazawa
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ナン・チャパティ・パパド・クルーチャ、
世界有数の粉食国家・インドの面目躍如である。
と、ここまでは順風満帆。
ライスものはビリヤニを選択したので
近々、カリー&ライスを食べに来なければ――。
再訪を心に決めた二人であった。
しかし、勝負は下駄を履くまで判らない。
レストランは勘定を済ませるまで判らないのだ。
最後のフィッシュフライで大きく外した。
おそらくメカジキであったろう。
品物が古い上にマリネのし過ぎでカチンコチン。
まったくもって、ヒドい代物だったのである。
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ドンデン返しのメカジキフライ
photo by J.C.Okazawa
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寅さんじゃないが、
見た目、うまそで食いつきたいが
あたしゃ、入れ歯で歯が立たないよ、
とでも言いたくなるのである。
おかげでいまだに再訪を躊躇している始末だ。
♪ まっさかさまに 墜ちてメカジキ ♪
末筆ながらニューヨークにおける
明菜の里親だったマイケルは
J.C.のもっとも親密にして敬愛する米国の友人。
ところがそれから数年後、
彼は突如として不慮の死を遂げてしまう。
2001年9月11日、早朝。
ニューヨークの空がこよなく晴れた、
あの月曜日のことでした。
【本日の店舗紹介】
「ダクシン」
東京都中央区日本橋馬喰町1-12-1
03-3249-9155
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