「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第878
ハープが奏でた十三夜

お月見というと中秋の名月の十五夜が真っ先に思い浮かぶ。
でも、これはもともと中国から伝わった風習。
対して十三夜は平安時代に始まった日本古来のものだ。
平安貴族が名月の下に集い、歌を詠んだのだという。
きゃつらもなかなかに風流よのォ。
十三夜は旧暦の9月13日。
供えものから栗名月、あるいは豆名月と呼ばれるという。

今年の十三夜は新暦の10月30日。
春日部のお茶屋さん(茶葉を販売するお茶屋であって
京都先斗町や祇園で有名なあの手の店ではない)、
おづつみ園ではお月見コンサートと題して
十五夜にはお琴、十三夜にはハープの調べが流れた。
社長のO堤サンも粋なことをする男よのォ。

ハープの演奏者は旧知の友人・石ア千枝子サン。
彼女の演奏会ではときとして
進行役を勤めるJ.C.も駆り出された。
店頭の一画に集まった聴衆はおよそ50人。
加えて徒歩や自転車で通りすがった人々も
例外なくその足を停めて耳を傾ける。

お月見なのでベートーベンの「月光」や
マンシーニの「ムーン・リバー」などの楽曲が
月明かりの下で奏でられた。
季節柄、秋をテーマにした曲も何曲か――。
もっとも拍手が多かったのはシャンソンの名曲「枯葉」。
都会の喧騒を忘れさせる優雅な1時間余りであった。

コンサート後はすぐ近くのおそば屋さん、
「芭蕉庵 巴屋」にて打ち上げ。
古い民家を改装したという大店(おおだな)は
都内では存在し得ないほどに立派なもの。
何せ、東麻布のうなぎ屋さん、
「野田岩」の建築を凌駕するくらいだ。

コンサートの成功を祝い、生ビールで乾杯。
普段の夕めしどきをとっくに過ぎており、
一同のお腹はペコペコである。
刺身・天ぷら・そば寿司のほかに
土鍋仕立てのおでんもいただいたが
当夜の逸品は鴨焼きである。
ロースはもとより、珍しいササミがなによりだ。

2軒目は「巴屋」の真裏に位置する
オーセンティックバー「Yellow Note’s」へ。
店名はニューヨークの「Blue Note」をもじったのだろう。
ここでは尾堤サンのセラーから運んだブルゴーニュの銘酒、
ポール・レイツのサントネ1978年を。
‘78年は稀代の当たり年である。

そういえばこの1週間前、都内某所にての食事会。
たまたまO堤氏、満50歳の誕生日を祝う会となったが
その折に主賓みずから持ち込んでくれた赤ワインが
すばらしいラインナップであった。

もう2度とこんな夜は訪れまい
photo by J.C.Okazawa

左から、バローロ テッレ・デル・バローロ‘91年。
シャトー・ベイシュヴェル マグナム‘59年。
ポール・レイツ サントネ‘79年。
殊にマグナムのベイシュヴェルは彼の生まれ年である。
丸々半世紀をまどろんだボルドーの偉大さは
筆(ひつ)に尽くし難いが
舌(ぜつ)にはしっかり今も刻み込まれている。


【本日の店舗紹介】その1
「芭蕉庵 巴屋」
 埼玉県春日部市中央1-4-16
 048-761-1431

【本日の店舗紹介】その2
「Yellow Note’s」
 埼玉県春日部市中央1-4-8
 048-755-4411

 
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2009年11月13日(金)

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