「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第879回
「うずら」にて鯨を食べる

白金は四の橋のたもと近く、
鯨料理が自慢の「うずら」なる店がある。
フレンチの佳店、「ラシェット・ブランシュ」の
はす向かい辺りである。
このフレンチを訪れたのはもう7年も前のこと。

今回は初めてうかがった「うずら」の話。
創刊以来、売上げ好調な月刊誌「めしとも」における
鼎談を兼ねての夕食会を開いた。
顔ぶれはレストラン界のオジャマ虫・友里征耶と
某大手食品会社のF森サン。
そして「めしとも」編集部のお二方である。

鼎談のテーマは「ハレの日に使える高級洋食店」だが
そちらの詳細は現在発売中の11月号に譲るとして
この夜の論議はかなり紛糾した。
理由はただ一つ、オジャマ虫の虫の居所が
極端に悪かったのである。
翌朝に健康診断を控えた「虫」はアルコール禁止。
アル中予備軍の兵隊に禁酒は酷な話だが
これもまた厳然たる現実の一コマではある。

言うこと成すこと、ことごとくJ.C.に論破された「虫」は
その悔しさに唇をワナワナと震えさせていた。
おまけにアルコールが切れて指先まで震え出す始末。
こちらはその不気味さに、胸が震え始めたのだった。
(ブルッ、おお〜、こわっ!)

「虫」はよほど悔しかったらしい。
後日、自分のブログでその恨み辛みを書き綴り、
心ある読者(誓ってJ.C.の差し金ではありません)から
あとになって言うのは卑怯です、と指摘されていた。
まったくその方のおっしゃる通りで
同じリングに上がっておきながら、
そこではパンチを出さず、リングを下りたあとで
「あれはこうだった、あのときはああだった」――
女々しき醜態、ここに極まれり。
弁解の余地も何もあったものではない。
まったく哀れなヤツよのォ。

「虫」から「うずら」に話題を変える。
この夜の酒は友里に配慮してビールだけにしておいた。
鯨の刺身だけでなく、はりはり鍋も囲むのだ、
日本酒が飲みたくなること必至。
そこを我慢した親心をボンクラは
爪の先ほども理解していない。
つける薬がないというのはこのことだ。
いけねっ、また話題が「虫」に戻っちゃった。

刺盛りは、さえずり・背身・ベーコン・さらしくじら。
これを辛子醤油・にんにく醤油・酢味噌を駆使して
いただくのである。
背身は半解凍のルイベ状で供された。

箸休めの里芋といかの煮付けをはさみ、
メインディッシュ的位置付けのはりはり鍋。
片栗粉でコーティングした赤身肉を中心に
油揚げと水菜がこれでもかと放り込まれている。
出汁の塩梅がけっこうだからすべての具材が旨い。
ただし、ふぐちりやたらちり、あるいは
あんこう鍋やちゃんこ鍋の上をゆくかというと、
そうでもなく、みな一様にその長所は独自のものである。

飾り気のない内装に拍子抜けしながらもおいしい一夜だった。
訊き忘れたが、当夜食べた鯨はナニ鯨であったのだろう。
一般的なミンクかな? 御徒町の「吉池」で見たことには
ニタリ鯨がイワシ鯨の数倍の値段で売られていたっけ――。


【本日の店舗紹介】
「うずら」
 東京都港区白金3-1-4 
 03-3473-0386

 
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2009年11月16日(月)

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