第882回
赤とは限らぬ 酒場のちょうちん (その2)
本所の人気店「わかば」のカウンターで
ビールを飲んでいる。
店頭に緑色の提灯を提げる変わった店だ。
店名の「わかば」から連想される色は緑だから
イメージカラーとしてはこれでいいのだろう。
1分ほどでもつ煮込みが運ばれた。
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絹ごし豆腐入りの煮込み
photo by J.C.Okazawa
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なかなか見映えのする煮込みではないか。
もつは牛のシロとテッポウを使用している。
こんにゃくと大根も入っていた。
意表を衝かれた具材が1種、これは寒天だろうか?
何かゼラチン質の物体も投入されているのだ。
みつ豆に入るあの寒天よりちょっと固めのヤツで
こんにゃくの代役のつもりかな?
提灯の色に限らず、煮込みまで風変わりな店である。
肝心の味だが、その前に煮込み自体がぬるい。
脂肪の融解点が豚もつより高い牛もつは
熱々でないと、いやな臭みが出てしまう。
おまけになぜか煮汁に酸味を感じた。
ずいぶんドロリとはしているものの、
オーソドックスな白味噌仕立て。
酸味の原因はついに突き止めること能わず。
うしろを振り返ると店のオバちゃんが
入り口近くの客用テーブルで仕込みを続けている。
生レバーやゆがいたシロに串打ちをしているのだ。
すでに客が入店しているのだからいい加減、
仕込みは切り上げましょうよ。
衛生上もよろしくないんじゃないの?
気を取り直し、もつ焼きをお願いすることに。
初っ端のカシラは塩と練り辛子でやる。
何だか肉質が固くて肉汁が少ない。
期待を大きく下回って煮込みに引き続き、
前途多難が予想される(こんなハズではなかったに)。
2本目のレバーと3本目のシロはタレで。
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見た目はどちらもおいしそう
photo by J.C.Okazawa
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するとこのタレが相当に甘ったるい。
好みの対極にあるタイプにガックシである。
焼き加減のほうはレバーがよくとも
シロは下ゆでのし過ぎで食感が頼りない。
焼きとんのラインナップに特シロを見つけて注文。
シロは小腸、特シロはテッポウで直腸のこと。
この1本に最後の望みを託すと、にんにくダレで来た。
タレはこちらのほうがありがたいが
特シロ自体は平凡で、またもやの期待はずれに意気消沈。
焼きとんの水準の高さでは
中央線や西武線沿線の追随を許さぬ下町界隈ながら
「わかば」には大きな不満を残すことになった。
いっそうのレベルアップを図っていただきたい。
そう、そう、最後にもう一言。
酎ハイ用の焼酎が真露では
とてもじゃないがオーダーする気になれない。
これだけで“お里が知れる”というものだ。
わかばハイ(緑茶割り)と生いちごハイの発想には
敬意を表するけれど、
下町の大衆酒場が焼酎の銘柄に無頓着ではいけません。
【本日の店舗紹介】
「わかば」
東京都墨田区本所4-19-9
03-3623-1459
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