「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第888回
旨みの抜もれた地鶏もあるサ

上野から不忍通りを北へ向かっていたときに
根津神社の入り口で見つけた「松好」は
焼き鳥と釜めしの専門店。
焼き鳥と釜めしがどこでどうつながるのか
この両方をウリにする店をときどき見掛ける。
浅草は観音裏で夜だけ営業する「田毎」は
その最たるもので
どちらも上々の仕上がりを見せてくれる。

「松好」は「田毎」と違って昼も開けている。
編集者のH川サンと打ち合わせを兼ねて入店した。
品書きの左ページには釜めしが4種類。
五目・鳥・あさり・鮭いくらとあって
1400円の鮭いくら以外はオール1050円。
右ページはどんぶり系がこれも4種類。
地鶏焼き鳥丼・地鶏親子丼・穴子ご飯・うなぎご飯と並び、
こちらも1400円のうなぎご飯以外は1050円なのだ。
そのほかに季節メニューなのか
地鶏タタキ丼があって1050円。
9種類のランチのすべてにサラダ・小鉢・みそ汁が付く。

周りを見渡すと釜めしを食べているのは
中年のオバさんが一人きり。
接客の娘さんに訊ねたら
釜めしの所要時間は18分とのこと。
H川サンは釜めしを食べたそうだが
せっかちなJ.C.に釜めしの選択肢はない。
うなぎならともかく、釜めしはそこまで待てない。

結局、彼女はタタキ丼、こちらは焼き鳥丼にした。
釜めしほどではないにせよ、10分以上は待ったろうか
2つのどんぶりがほぼ同時にやってきた。

温泉玉子が乗った焼き鳥丼
photo by J.C.Okazawa

串を外された焼き鳥は全部で4本。
その内訳は、正肉・ねぎま・つくね・レバーで
まずまずの充実ぶりを見せる陣容だ。

一番はじにあった正肉の一片を口元に運ぶ。
何度か咀嚼(そしゃく)してみたが
「あれれ、旨みがもれちゃってるな」――であった。
けしてまずくはないのだが
地鶏どころか、普通の鶏肉の旨みすら感じられない。

H川サンのタタキ丼はというと

やけに水菜の多いタタキ丼
photo by J.C.Okazawa

いかにも女性好みの愛らしさはあっても
男の食欲をそそるほどのルックスではない。
食べ始めた彼女の表情も少々曇っている。
お互い視線を合わせて暗くうなずいた。
副菜とみそ汁が丁寧なのが救いといえば救いだ。

半年ほど前のこと。
そのときは夜に酒を飲んだのだが
すぐそばの焼き鳥屋「小松」でも同じ印象を持った。
よその名店・佳店と比べるつもりはないけれど、
どうも「ん?」と、首を傾げる焼き鳥に
ぶつかる町ですよ、この町は――。
「根の津」と「釜竹」の名店2軒を擁する根津は
あくまでもうどんの町であって
焼き鳥を不得手としているのかもしれない。


【本日の店舗紹介】
「松好」
 東京都文京区根津1-18-10
 03-3821-4430

 
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2009年11月27日(金)

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