「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第889回
私娼街の残り香(その1)

出し抜けにいきなり問題です。

玉の井・立石・新小岩・
亀戸・亀有・北千住・
調布・立川・八王子

以上に挙げた東京の街々に共通する点は何でしょう?
これで判らなければ第一ヒント。

鳩の街・東京パレス・洲崎パラダイス

で、いかがでしょう?
えっ、まだ判らない?
それでは第二ヒント。

新吉原

これでお判りですね?
そうです、かつてこのすべての街に
公娼街、あるいは私娼街があったのです。
いわゆる赤線地帯、そして青線地帯ですね。

1957年4月に売春防止法が施行され、
その翌年4月には同法の完全施行をみて
ついに“赤線の灯”が消されたのであった。
したがってJ.C.は
その“地帯”に足を踏み入れたことが一度もない。
だが、“地帯跡”は何度も訪れている。
はっきり言って好きな場所なのだ。
殊に墨東の玉の井(現在の東向島)は
もっとも心惹かれるエリアと言い切ってよい。
永井荷風作「濹東綺譚」の舞台となったところである。

もともとは大正の中頃に
浅草観音裏にあった何軒かの店が
この地に移転してきたのが紅灯の始まり。
その後、浅草十二階下の銘酒屋街が
関東大震災で壊滅してしまい、
玉の井と亀戸に分散移動して
二大私娼街を形成することとなる。

震災の次は戦災である。
玉の井の街を東西に分ける、いろは商店街の東側に
迷路のごとく拓けていた私娼窟が大空襲で焼かれ、
戦後は西側に移って営業を続けた。
西側一帯では今でもその名残りを
ここかしこに見ることができるのである。
今回は「濹東綺譚」の陋巷に身をまかせ、
その残り香を嗅ぎながら、ゆるり酒盃を傾けてみたい。
とはいっても何軒かハシゴするのだが・・・。

1軒目の「十一屋」は此度の訪問が初めて。
東武伊勢崎線・鐘ヶ淵から歩いて行った。

郷愁をそそるたたずまいが素敵
photo by J.C.Okazawa

いいですねェ。
滝田ゆう作「寺島町奇譚」の世界そのものではないか。
店舗の建物自体もさることながら
背後に立つ銭湯の煙突もいい味を醸している。

まだ17時だというのに、店内のカウンターは満席。
われわれ2人はテーブル席に落ち着いて
壁に張り巡らされた品書きの字を読んだ。

            =つづく=

 
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2009年11月30日(月)

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