「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第893回
悲劇の日曜日(その2)

映画館を出てからビストロに向かう途中、
あるいは食事を終えて帰宅する途中、
余計なニュースが耳に飛び込まぬよう、
キオスクの夕刊紙の見出しが目に入らぬよう、
細心の注意を払ったJ.C.であった。

なぜならばゴルフやボクシングの結果を
街の声から報されないとも限らないからだ。
スポーツというものは先に結末を知ってしまうと、
緊迫感が半減どころか、9割がた消滅する。
幸い日曜日でキオスクは閉店中だし、
帰宅の途に着くサラリーマンもいやしない。

録画したビデオはまずゴルフから。
ところが観始めた時点で決着がついたも同然の大差。
しかも丸チャンでも遼クンでもなく、
策士“諸葛孔明”の頭上にほぼ確定の赤ランプが点いている。
いや別に小田チャンでもいいが、連覇というのもなァ。
憮然として冷蔵庫から2缶目のビールを取り出した。
余計なことながら家のビールは500mlのロング缶だ。

ビストロのワインと帰宅後のビールのせいか、
ウイニングパットが決まった頃に眠気が襲って来た。
こいつはイカンと、TVを消して一寝入り。
1時間ほどで目覚め、再びスイッチオン。
テレビは消えてもビデオは回っていた様子で巻き戻す。
巻戻しが甘いとボクシングの途中にぶつかり、
早いラウンドでのKOだったら先に結果が判ってしまう。
ここは慎重を期してゴルフの終盤まで巻戻した。

さあ、いよいよと姿勢を正して見入ったとき、
いきなり画面に現れたのは左のこめかみをチョコンと
赤く腫らした亀田のタコならぬ、興毅ではないか!
「エッ? エッ? エエ〜ッ!!」――焦りまくるJ.C.。
「何だよコレ〜ッ?」
何が起こったのか、寝ぼけた頭では即座に判断できない。
しかも画面の興毅がニコニコしてるのは勝者の証し。
あわててもっと巻き戻しても興毅の顔は画面から消えない。

何のことはないTBSの深夜番組に
新チャンピオンの亀田興毅が生出演していたのだった。
ビデオを見るつもりがTVのライブを見ちゃったわけだ。
何でチャンネルを他局に回しておかなかったんだろ。
後悔してもあとの祭り、何という悲劇だ!
傍から見りゃ喜劇でも、当事者には悲劇以外の何物でもない。

いきなりのクロスカウンターにダウンは喫したものの、
カウントアウトを聞かずに辛うじて立ち上がり、一応は観た。
観たけれど、緊張感のかけらもナシ。
そりゃあそうだよ、スポーツニュースと変わらんもん。

そして感想記。
一言で言うとアウトボクシングに徹した亀田陣営の作戦勝ち。
直接の勝因は内藤の鼻梁を打ち抜いた2Rのストレートだが
セコンドの末弟・和毅が1R終了後に発した言葉がすべてだ。
「リズム取っといたら、見た目違うからな!」――This is it!
M・アリの“蝶の舞い”、“蜂の針”ほどではないにせよ、
興毅には少なからずこれがあった。
人は見た目が9割、ボクサーもまたしかりなのである。

判定で勝敗の決することが多いボクシングはある意味、
五輪の体操やフィギアスケートと同列に置いたほうがよい。
判定にもつれればチャンピオン有利というのも昔の話で
4R、8R後に中間発表があるため、
あとからジャッジがちょこちょこ修正できなくなった。
加えて変則型のボクサーはバランスを崩しやすく、
愚直にすら見えてしまい、見た目がよくないから
判定になると分が悪い。
倒さないとなかなか勝機を見出せないのだ。
古い話で恐縮だが、往年の藤猛や輪島功一は
必ず相手をマットに沈めてきたのである。

心に残ったのは内藤選手の奥さんとお母さん。
最後まで気丈な姿勢を崩すことなく本当に立派でした。
格闘家を身内に持つのはつくづくツラいことです。

 
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2009年12月4日(金)

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