第899回
じゃが芋の父・パルマンティエ
料理はボリュームじゅうぶんで値段は手ごろ。
東銀座のはずれの「ポン・デュ・ガール」は
八丁堀の人気店「ガール・ド・リヨン」の姉妹店。
以前は確か「つちや」という昼は定食屋にして
夜は居酒屋になる店があった場所で
1度だけ焼き魚か何かのランチを食べた記憶がある。
キャパの小さい「ポン・デュ・ガール」は
席の確保がままならないのがネック。
2週間ほど前に何とか予約を取り、
出掛けて行ったのは、とある日曜日の夕まぐれ。
映画「沈まぬ太陽」を観たあとだから
太陽はすでに西空の彼方に沈んでいた。
まずはサッポロ黒ラベルの生で相方と乾杯。
なぜか関西のお好み焼き屋で
よく見掛けるトンペイ焼きがあり、
これ幸いとビールのアテに注文。
あとはローズマリー風味のキノコのマリネ、
さつま芋のローストを添えた半羽のチキン照焼き、
アッシュ・パルマンティエをお願いした。
料理ができ上がる間に席を立って棚のワインを吟味する。
中から選んだのはチリ産ピノ・ノワール種の赤ワイン、
ヴァルディヴィエソ グラン・リゼルヴァ‘06年。
ボトルに3680円と明記され、明朗価格はよいけれど、
ここに5%のタックスが上乗せされる。
料理の値段は税込みなのにワインが税別では整合性に欠ける。
少々あざとい商法と揶揄されても弁解はしにくい。
細かいことながら、今のご時勢では大切なことだ。
トンペイ焼きは今はなき浅草の名店「O-kura」には
及ばぬものの、まずまずであった。
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揚げ玉は生地に混ぜたほうが・・・
photo by J.C.Okazawa
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キノコはシメジとエリンギが主体。
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ローズマリー香るキノコのマリネ
photo by J.C.Okazawa
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照焼きチキンが上々で、付合わせのさつま芋には
蜜がたっぷりと掛けられており、甘党の相方は大喜び。
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チキンの下にはさつま芋がごっそり
photo by J.C.Okazawa
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さて、あまり聞きなれないアッシ・パルマンティエである。
この料理をご存知の方はちょっとした仏料理通として
嫌味にならない程度なら自慢しても差し支えない。
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熱々のアッシ・パルマンティエ
photo by J.C.Okazawa
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ご覧のようにマッシュドポテトと挽き肉の重ね焼きだ。
アッシというのはみじん切りのことで
ここでは挽き肉を意味する。
パルマンティエは16世紀のフランスの薬屋さん。
当時のフランスではドイツやアイルランドに比べ、
飢饉に強いじゃが芋の普及が遅れていた。
そのじゃが芋を庶民の間に広めた功労者がこの人だ。
日本の青木昆陽がさつま芋の父ならば、
フランスのパルマンティエはじゃが芋の父と言えるのだ。
あまり芋類、殊にさつま芋を好まぬJ.C.が
この夜は珍しくもさつま芋とじゃが芋を両方やっつけた。
翌日、懸念していた胃のもたれもなく、
快調な一日を送ることができた。
なあ〜んだ、食べようと思えば食べられるじゃん。
【本日の店舗紹介】
「ポン・デュ・ガール」
東京都中央区銀座1-27-7
03-3564-0081
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