「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第900
津軽三味線とフラメンコ

毎年12月上旬に五反田ゆうぽうとホールに出向いている。
長嶺ヤス子の舞踏を観るためだ。
これを観て、有楽町「レバンテ」の牡蠣を食べると
J.C.の冬が初めて到来するのである。

今年の公演はすでにおなじみとなったスペインからの
フラメンコの踊り手、アントニオとイザックのほかに
アメリカからも5人の黒人ダンサーが呼ばれた。
加えて「じょんがら」と題した本公演には
初の試みとして津軽三味線の一団も参加している。

日・西・米が三つ巴で織り成すステージはW杯さながら。
半年前に南アで開催されたコンフェデ杯準決勝では
サッカーファンの想像を絶する世紀の番狂わせを演じ、
無敵艦隊スペインを2−0で葬り去ったアメリカだったが
当夜の観客の拍手はもっぱらスペインペアに集中、
くしくもピッチの仇を舞台で討つスペインであった。

それにしても津軽の三味線・笛・太鼓・唄は
いずれもすばらしく、ややもすると
陰湿なメロドラマに堕しがちな筋立てを
カラリ乾いた愛憎劇に昇華させ、その効果たるや甚大。
長い一本道のような長嶺ヤス子の芸道に
新たな息吹を吹き込む原動力となったことは疑いない。
観客を巻き込んだラストの盛り上がりもすさまじく、
主客ともに記憶に残る公演の幕はかくして降りた。

予定終演時間の21時を大きく回ったので
われわれ一行4人は急ぎタクシーに乗り込み、
予約を入れてあった「太田屋」へ直行。
隣町の不動前では知る人ぞ知る名居酒屋である。
ロケーションは桜の名所・かむろ坂の坂下近く。
この坂の桜は美しい。美しくも風情がある。
小石川の播磨坂にも言えることだが
桜並木を愛でながらのそぞろ歩きは坂道を下るに限る。

生ビールで一同、「お疲れさん!」のあとは
燗酒やらヒレ酒やら、てんでに好き勝手なものを。
J.C.は壁いっぱいに貼られた短冊の中から
目ざとくも生ライムサワーを見つけ出し、
大ジョッキーでお願いした。
生レモンや生グレープはそこかしこで見掛けても
生ライムだけは、そうたやすくは見つからない。
理由は簡単、加州産レモンは1個50円で買えるところ、
メキシコ産ライムは実に4倍、200円もするからだ。

つまみは新鮮な肝付きツブ貝刺し2人前に
中とろ・赤身が半々のまぐろ刺し1人前。
生牡蠣はポン酢と三杯酢をそれぞれ1人前ずつ。
あとはポテトサラダ、もつ煮込み、鯨竜田揚げなどを。

この「太田屋」、何を食べてもハズレは皆無。
生モノではツブと牡蠣三杯酢が双璧だった。
甘みの勝ったポテトサラダもはなはだ懐かしい味。
子どもの頃に町のパン屋の棚には常にあった
サラダパンやサラダサンド、あの味そのものなのである。
持ち帰って翌朝パンにはさんで食べたくなるほどのもの。

卓抜だった牡蠣に敬意を表し、牡蠣フライを追加すると
タルタルソースのほかに中濃ソースも添えてくれた。
わが「庶ミンシュランA」では無印良店にランクしたものの、
第3弾を出す機会に恵まれたら、一ツ星確定ですなここは!


【本日の店舗紹介】
「太田屋」
 東京都品川区西五反田4-3-5
 03-3491-3620

 
←前回記事へ

2009年12月15日(火)

次回記事へ→
過去記事へ 中国株 起業 投資情報コラム「ハイハイQさんQさんデス」
ホーム
最新記事へ