第912回
お皿の上の「紅白魚合戦」
2009年も今日で終わり。
明日からは寅年の2010年が始まる。
毎年、大晦日になると「紅白歌合戦」を観ているが
ここ数年、いえいえ、ここ20年ほどは
出て来る歌、出て来る歌、みなちんぷんかんぷん。
殊に前半は手の施しようがない。
いつの頃からか“にっぽんの歌”なのに歌詞もタイトルも
やたらめったらアルファベットが増えてしまって
自国語の危機を懸念するフランス人ならずとも
行く末に心細さを感じているのはJ.C.だけではあるまい。
そんなこともあり、「紅白」の前半が進行している時間帯は
12チャンネルあたりで「思い出のメロディー」なんか
やってくれたりすると、ありがたくそのお世話になるのだ。
「歌は世につれ」とはまことによく言ったもので
むかしの歌を聴けば、その時代がまざまざとよみがえり、
亡くなった両親のことなどが思い出されて
感慨に耽ったりもする。
無理にこじつけたみたいだが
今日は歌謡界の「紅白」ではなく、料理界の「紅白」、
お皿の上の「魚合戦」とシャレてみた。
戦場は東麻布の寂れた商店街である。
店の名前は「魚ゆ」、鮮魚店直営の定食屋だ。
昼めしどきの営業のみで夜は開けないから
ここで酒を飲む客はいない。
その日の定食メニューはかくの如し。
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定食が9種類にサイドメニューが4品
photo by J.C.Okazawa
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ご覧のように単品以外はすべてサカナ料理。
以前、世話になった編集者と待ち合せて赴き、
選んだのはJ.C.が真鯛とまぐろの刺盛り、
彼女は鯖の塩焼きである。
ほかに小鉢も水戸納豆をのぞく3品すべてお願いした。
眼鏡を掛けた接客のおネエさんの感じがよい。
女性客にはごはん少なめなので
お替わりをしてくれとのことだった。
ほどなくJ.C.の刺盛りが先に運ばれた。
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真鯛の白とまぐろの赤が好対照
photo by J.C.Okazawa
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ほう、量もたっぷりあるではないか。
さしずめ白組の主役は真鯛、脇の帆立が応援団長か。
対する赤組のエースはまぐろで、たこが応援に回った。
活け〆だけに真鯛のテクスチャーにプリプリ感が残る。
まぐろ赤身はその食感からバチまぐろだろう。
純生を謳うだけあって冷凍の解凍に見られがちな
ドリップのしたたりはない。
気になる合戦の勝敗は引き分け。
というか、850円の刺身盛合わせ定食に
まさか帆立やたこまで登場するとは思ってもいなかった。
想定外の満足感に白黒つけないことにした。
相方の鯖の塩焼きだが、これには大根おろしに加えて
しらす干しまで盛込まれている。
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こちらもけっこうな大きさの鯖塩焼き
photo by J.C.Okazawa
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気前のよい店だなァと、感心はするけれど
笑っちゃったのはこのしらす。
半分凍ったままの半解凍状態で
しらすのルイベってのには、めったにお目に掛かれない。
【本日の店舗紹介】
「魚ゆ」
東京都港区東麻布1-29-1
03-3583-4855
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