第919回
ハゼの唐揚げ カレイの味噌漬
小学生の頃、大田区の平和島に住んでいた。
京浜急行の平和島駅が高架になる前で
それどころか駅名が「平和島」ではなく「学校裏」だった。
まだ平和島口から平和島へと続く橋の下まで
東京湾の水が浸入していた当時は
橋上から釣り糸を垂れる釣り人の姿をよく見掛けたものだ。
ボラやハゼが釣れたんではなかったかな・・・。
その夜は友人のS美クンと大森にいた。
タンメンの取材で訪れた町の中華屋、
「満福」を再訪するためである。
店内の貼紙が忘れられずに舞い戻ったのだ。
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この貼紙にそそられた
photo by J.C.Okazawa
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幼い頃に見た大森海岸のハゼ釣りの光景が
まぶたによみがえったことも帰還の一因である。
冷えたビールを飲みながら
さっそく唐揚げと新香を所望する。
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意外にも稚ハゼだった唐揚げ
photo by J.C.Okazawa
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稚アユの天ぷらは大好物だが
稚ハゼというのはあまり見掛けない。
こういうこまかいのは釣り針ではなく、
網でごっそり獲ったんだろうな、きっと。
天ぷらよりも佃煮や甘露煮に向きそうなヤツで
期待ほどではないにせよ、それなりのおいしさだ。
続いて運ばれた新香を見てS美クンが
ブスッとつぶやいた。
「雪が降り積もっちゃってるネ」
ブスがブスッとつぶやくと、不穏な空気が流れる。
「エッ、何だって?」
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本当に雪降り積もる新香盛合わせ
photo by J.C.Okazawa
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「ゲッ!」――“Aの素”のあまりの多さに
J.C.思わず、カエルの鳴き声。
ティッシュで“死の灰”を拭い取ったりもしたが
これだけ大量では、もうどうにもならない。
意気消沈の2人、あとは餃子を追加しただけでお勘定。
JR大森駅のガード下に戻って
以前、取材拒否にあった「喜楽」を訪ねるのも一法ながら
中華&中華というのもいささか芸がない。
そこで「満福」に来る道すがら、
たまたま発見した居酒屋「義経」に回った。
オバちゃん2人だけで切盛りしており、
店先には焼き鳥用の焼き台が煙を上げていた。
燗酒と一緒に煮込みを頼むと、突き出しはかぼちゃの煮付け。
煮込みはすぐにやって来た。
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根菜入りの煮込み
photo by J.C.Okazawa
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大根やにんじんが入り、
見るからに女性が作った煮込みの景色。
男が作るともつのほかは、せいぜいコンニャクどまりなのだ。
大きな業務用冷蔵庫の扉に
本日のおすすめを記したボードがぶら下がっている。
おすすめは4品。
マグロブツ・さんま塩焼き・
カレイ味噌漬・銀ダラ味噌漬(大)
なぜ“さんま”だけがひらがな表記なのか判らない。
銀ダラのあとの(大)というのはサイズのことだろう。
珍しいからとカレイの味噌漬をお願いした。
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かなりのサイズのカレイの切り身
photo by J.C.Okazawa
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高級なカレイではなかろうが
味噌の漬かり具合がよく、これは当たりで気に入った。
しかしながら、一番気に入ったのは
「義経」という屋号であることは言うまでもない。
【本日の店舗紹介】その1
「満福」
東京都大田区大森北2-10-1
03-3764-3858
【本日の店舗紹介】その2
「義経」
東京都大田区大森北3-4-18
03-3763-9600 |