「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第922回
実力発揮の「鮨 おちあい」(その2)

東銀座は東武ホテルの脇にある「鮨 おちあい」にいる。
極上の寒鰤の薄造りを本わさびでやったところ。
しつこさのない上品な脂が天然モノであることの証しだ。

厚岸産の殻付き牡蠣がペアで来た。
酢橘(すだち)が添えられたが、牡蠣にはレモンだと思う。
晩夏から初冬にかけて収穫されるこの柑橘が
牡蠣の季節に合わないとは言わないけれど、
酢橘が本領を発揮するのは
もっと繊細な食材と出会ったときじゃなかろうか。
皮はぎや平目の刺身、きすや太刀魚の塩焼きなど
白身魚との相性がよく、牡蠣では豊潤すぎるきらいがある。

箸休めというか、チェンジ・オブ・ペースというか、
たこ柔らか煮(桜煮ではなかった)とともに
玉子焼きが登場し、芋焼酎のロックに切り替えた。
ちょうど舌が甘みをほしがる頃合いで、これはありがたい。
山芋を使わぬ玉子焼きが殊更気に入った。
同じ銀座の新鋭、「青空(はるたか)」のそれも悪くはないが
いかんせん、山芋のぬめりがうっとうしい。

いったいいつの頃から江戸前鮨屋が
玉子に山芋を入れるようになったのだろう?
感心しないと言うよりも、ハッキリ言って嫌いなシゴトだ。
納豆・オクラ・芽かぶのように
ねばねばヌメヌメした食材は鮨屋の粋(いき)に似合わぬ。
大和芋も長芋もまたしかりなのである。

つまみの締めくくりに真鱈白子の塩焼きが出た。
ふ〜ん、ニクいじゃないですか。
助宗の真子に始まって真鱈の白子で締められた。
職人の非凡さが如実に表れている。

2杯目のロックを飲み干し、
お替わりをしておいてにぎりに突入する。

すみいか・赤貝・金目昆布〆・平貝・中とろ・
小肌・ばふん海胆・大とろ・車海老・いくら・
穴子・皮はぎ

赤字が特筆モノである。
海胆の軍艦は好まぬのにこれはイケた。
半生の車海老のほのかな甘みと食感が秀麗。
この店では海老の尻尾を落として出す。
大トリの皮はぎは白眉。
純白の身肉の上に肝が塊で君臨している。
当夜のベストはこれ!

金目は昆布〆よりもサッと炙ったほうが好み。
中とろと大とろの大間産まぐろも赤身を賞味したかった。
九州産ということは天草だろうか、
小肌にはもっとパンチを求めたい。
白身と並んでJ.C.の好物の赤貝・小肌・穴子に
卓抜さが認められなかったのも心残り。
とはいえ、存分に楽しんで満足度は高い。
開店2年を経ていよいよ本領発揮の「鮨 おちあい」である。

店の真ん前は東武ホテル。
久々に地下のバー「光琳」のカウンターへ。
ジンベースのホワイトレディをハードシェイクでまず1杯。
2杯目はジンをコニャックに替えただけで
レシピは変わらぬサイドカー。
真っ当な鮨屋のあとで正統派のバー。
ほかにどんな“銀座の夜”の楽しみ方があるというのだ!


【本日の店舗紹介】
「鮨 おちあい」
 東京都中央区銀座7丁目13-1 JOYビルU2F
 03-5565-0277
 0066-9673-47519(予約専用)

 
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2010年1月15日(金)

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