「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第923
かき南蛮の季節(その1)

東京にはほとんど影響がなくとも
日本各地を豪雪が見舞っている。
九州の鹿児島まで雪化粧となると
もはや地球温暖化現象はどこへやら、
これを潮目に地球寒冷化に大転換なんて
バカなことがあるわけはないか。

年が明けてから冷え込みが一段と厳しくなった。
おかげで寒鰤や寒平目が
ますますその美味に拍車をかけているし、
白子を肥らせた河豚も今が食べごろ。
まっこと河豚は、刺しでよし、鍋にしてよし、
“よくぞ日本に生まれけり”を実感させてくれる、
実にありがたい海の幸だ。

平目だと、刺身や昆布〆なら最高だが
残念なことに鍋には向かない。
フランス風鍋料理、いわゆるブイヤベースに使えても
コストを考えたら、もったいなくて二の足を踏む。
ときどき小ジャレた洋食屋のメニューに
平目のフライを見掛けることがあるけれども
千円ほどの値付けでは、本平目を期待しても無理。
煮付けにするなら割安感のある鰈(かれい)でじゅうぶんだ。

鰤にしたって鰤しゃぶを出す高級店もあるが
けっして鍋にふさわしいサカナではない。
鰤は刺身、塩焼き、照焼きがゴールデントリオ。
そう、そう、富山の鰤寿司は車窓の友にうってつけですね。

鮟鱇も冬にその旬を迎える。
こちらは鰤や平目と真逆で鍋にはよいが
刺身にはまったくの不向き。
フランス料理店でちょくちょく目にすることがあり、
もっぱらポワレやソテーとして供される。

さように日本の冬の味覚は海マカセなのである。
河豚・鰤・平目・鮟鱇と並べてみて
何か肝心なものを忘れていたことに気づく。
そうです、この季節は何と言っても牡蠣でしょう。
洋の東西を問わずに愛される牡蠣はいいですねェ。

徳川家ゆかりの根津神社のそばに
早朝から営業を始める奇特な日本そば屋がある。
午前7時半から2時間ほど開き、
途中、中休みを取って正午から午後6時までの営業。
昼と夜に開けたほうが売上げは伸びそうなものだが
かたくななまでにこの営業方針を貫いている。

冬場のこの店の名物・かき南蛮が食べたくなった。
朝っぱらから出向くのはツラいので正午に入店。
さっそくビールと行きたいところながら
ここにはエビスしかない。
重たいビールは苦手につき、何のためらいもなくパス。

卓上に妙なものがデンと構えている。

不審物の名は焙炉(ほいろ)
photo by J.C.Okazawa

何でもこれで板海苔や板若布をあぶるんだそうだ。
たかが海藻にずいぶんな大仕掛けを要するものですな。

胡坐(あぐら)をかいてくつろぎ、
ツレと2人で注文したのは
せいろ・深山(みやま)・かき南蛮の合わせて3品。
深山というのは他店で呼ぶところの田舎そばである。

           =つづく=

 
←前回記事へ

2010年1月18日(月)

次回記事へ→
過去記事へ 中国株 起業 投資情報コラム「ハイハイQさんQさんデス」
ホーム
最新記事へ