「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第929回
うな丼にうなった!

JR神田駅そばに西口商店街がある。
買い物客や飲食目当ての人ばかりでなく、
美土代町・錦町方面で働く会社員の通勤路になっており、
近くに神田外語学院があったりもして
通行人の数は相当なものだ。

以前、近所の新日本橋に勤めていたので
この界隈へはたびたびランチに訪れた。
西口商店街に面して「うな正」という、うなぎ屋がある。
庶民的な値段で国産のうなぎを食べさせ、
昼めしどきは立て混む人気店となっている。

安かろう、悪かろうではないが
初訪問の印象はけしてよいものではなかった。
2000年2月のことで、ちょうど10年前のことだ。
たまたま840円のうな丼が売り切れており、
1050円のうな重(梅)と1575円の中入れ丼しかない。
(現在、中入れ丼はうな丼ダブルと称されている)
当然の如く、(梅)をお願いする。
ついでに肝焼きを1本所望したが
これが生焼けでイケなかったのだ。

10年も経てば記憶も薄れてしまう。
つい先週、徹夜明けで軽い朝食を済まし、
グッスリ眠って大相撲中継が始まる頃に目覚め、
白鵬が日馬富士に送り出されるのを見届けたのち、
所用でこの一角に現れた。
灯りの点る店々を見ているうち、にわかに空腹感を覚える。
ときに午後7時で、丸12時間も食べていないのだから
そりゃ腹も減りますわな。

しばらくうなぎを食していないぞ、と思いつき、
フラフラッと「うな正」に入ってしまっていた。
当夜は別々の相手と会うため、
2軒の店を訪ねる予定だったが、
こう腹ペコでは何ともしがたい。
まずはサッポロ黒ラベルの中瓶と
肝焼きならぬレバー焼きを注文した。
腸や胃袋を排して肝臓だけを集めたものだ。
大ぶりのレバーは1串に8匹分も打たれていたろうか、
210円という値段を考慮すれば、まずまずであろう。

続いてお願いしたうな丼が思い掛けない佳品であった。
思わず唸(うな)ったほどである。
数ヶ月前、「めしとも」の取材でチェーン店ばかりを回り、
うな丼地獄に陥った苦い思い出が
いまだにトラウマとなっている。
「うな正」はチェーン店ではないものの、
値段が値段だけに下手を打つと
あの悪夢がよみがえるリスクが高いのだ。

ところが静岡産の小ぶりなうなぎを
丸1匹使用したうな丼がJ.C.のもっとも好むサイズ。
通常、この手の廉価版は普通サイズのうなぎが
半尾、あるいは3/4尾で登場するところ、
「うな正」はうなぎ本体の大きさで調整し、
常に丸1尾で提供するところが実にエラい。
これが鰻道(こんなのあるか?)の本筋であろう。
だからこそスモールサイズのうなぎがなくなると
うな丼は売り切れとなってしまうのである。

昨今はラーメンですら7〜800円ふんだくる店が少なくない。
J.C.は嫌いだがトッピングをちょこちょこ追加したら
1000円になってしまうこともあろう。
その点、840円のうな丼ならば、給料が安かろうが、
学生の分際だろうが、けっして手の届かぬ金額ではない。
フトコロの温かい方も寒い向きも
1度食べてみて損のない、うな丼が神田西口商店街にある。
訪れるべし。


【本日の店舗紹介】
「うな正」
 東京都千代田区内神田3-11-1
 03-3256-9288

 
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2010年1月26日(火)

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