「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第933回
ザ・マン・フロム・ストックホルム(その4)

3回で切り上げる予定の“S水シリーズ”が
なかなか終わらない。
「オマエの昔のダダ話は、もういい加減にしておけ!」
そんな読者の苛立ちを薄々感じながらもまだ続く。

今、伝えておかないと(それほどの問題ではないが)、
余命に限りあるこの身、
池波翁ふうに言わせていただければ、
いつ何どき機会を永遠に失ってしまうか、
知れたものではないのである。

英仏海峡上のS水&オカザワは
甲板で知り合ったポルトガルの洗濯女、ではなかった、
英国留学に向かうポルトガルの女学生2人を
うまいこと手なづけ、つたない英会話に励んでいた。
能天気にロンドンの住所を交換したりもしていた。
やがて船はサウサンプトンに入港。
やれやれ、イギリスに再入国である。

読者におかれましてはお待ちどう様、
いよいよここで悲劇が起こったのであります。
入国手続きの際、なぜか弥次さん・喜多さんは留め置かれる。
手錠こそ掛けられなかったが
別室に「ごあんな〜いッ!」であった。
今にして思えば、それも致し方なし。
2人の財布はほとんど空っぽだったんだもん。

S水にはロンドンの下宿先があるし、
銀行に預金だってあるんだ(真っ赤な嘘)と、
申し開きをしても審査官は聞く耳を持っちゃあいない。
さんざっぱら粘った挙句に
パスポートに押されたのは、たった2週間の滞在許可。
数日前、ヒースロー空港に颯爽と(?)降り立ったとき、
ポンと気前よく6ヶ月の入国ビザが
与えられていたにも関わらずだ。
男のロマンを果たそうと出国したばかりに
6ヶ月の虎の子ビザを失ってしまった。
これは経済的にも精神的にも大きな打撃となった。

ほかの乗客の姿など、もうどこにもなく、
最後の最後に暗い港に放り出された2人は
肩を落として夜空の星を仰ぎ見るだけであった。
疲れ切っているのに、なお3時間も歩き回って
ようやく安ホテルに転がり込んだのは夜中の3時。
翌朝は早起きして、また何時間も費やすヒッチハイクだ。
男2人じゃ止まるクルマも止まりゃしないよ。
命からがら何とかその日のうちに
ロンドンにたどり着いたのでした。

どこでもいいからすぐにも語学学校に授業料を納め、
通学証明書を携えてホームオフィスに出向き、
ビザの更新をしなければ国外追放である。
おっとその前に仕事を探さなきゃ、
授業料も払えないし、メシすら食えないのだ。
そうして見つけたのがグロウスター・ロード駅前の
ハンバーガー・レストランのウェイター。
まさに地獄で仏とはこのことであった。

ともに東京の高級ホテルで磨き上げられた接客ぶり、
ロンドンの食堂のウェイターは朝飯前だ。
ただし、言葉を除いてではありますけどネ。
とは言うものの、ハンバーガー屋で使う用語なんざ、
たかが知れている。
3日とおかず、水になじんだ2人であった。

              =つづく=

 
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2010年2月1日(月)

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