「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第932回
ザ・マン・フロム・ストックホルム(その3)

今日はまずお詫びと訂正から。
第930回の第4段1行目、
SPレコードとあるのはEPレコードの誤りです。
うっかりミスをご指摘いただいた、
浅草のIやサンと越前市のK川サン、
ありがとうございました。

さて、半年ぶりにパリで再開する予定が
その前夜にドーヴァー駅でバッタリ出くわした2人。
ちょいとばかり思案と逡巡を重ねたものの、
予定通りに海峡を渡ることにした。
積もり積もる話で夜を明かし、
カレーからの列車内ではウトウトしただけである。

11月1日早朝、パリ北駅に到着。
取りあえずカフェで朝食を済ませ、
約束の11時には凱旋門の下に立った。
そこからどこへ行ったのかは丸っきり覚えていない。
とにかくその夜は投宿した安宿に
赤ワイン・チーズ・バゲット・ハム・ソーセージに
にんじんサラダのキャロット・ラペなども持ち込み、
グラスを酌み交わしたのであった。

お互いにパリの観光名所はすでに知り尽くしているので
それでは数日間、どうして過ごそうかがテーマだ。
意見の一致を見たのはノルマンディーのシェルブール行き。
われわれを北の港町に駆り立てたのはもちろん、
2人とも大好きな映画「シェルブールの雨傘」である。

ところが、いざ行ってみて小1時間も街を歩いたら
あとはもう何もすることがなくなった。
それでも丸3日もいたろうか、
手持ち無沙汰きわまりなく、港に面したカフェで
ビールを飲みながらサイコロを転がす日々。

シェルブールからは対岸のサウサンプトンまで
フェリーが運航している。
そろそろ英国に帰ろうと、切符を買った。
ここでまず第一の小さな悲劇が勃発。
どちらが受け取ったのか、買ったばかりのチケットを紛失。
これにはガックシで、いささかマイッた。
何せ、なけなしの銭をはたいて買ったんだもの、
財布の中身は空っぽに近い。
歩き回った場所を何度も行ったり来たりして
数時間はほっつき歩いたんじゃなかったかな。
あきらめてとぼとぼとターミナルへ戻り、
また同じ切符を買う羽目に陥った次第。

ところが世の中、捨てる神あらば拾う神ありですな。
もともと閑古鳥鳴く切符売り場のことだから
売り子のオバちゃんも半日前と同じ人。
そしてありがたいことにこのオバちゃん、
いえ、いえ、オバちゃんなんて呼んではもったいのうござる、
まさに観音様ですよ、観音様!
東洋から来た若者をしっかりと覚えていてくれて
お安い御用とばかりに再発行してくれたのだ。
このときの観音様には本当に後光が射していた。
思わずキスしたくなったほどである。

こうして失った元気を取り戻し、
意気揚々とサウサンプトンに向かう、弥次さん・喜多さん。
前途に大きな悲劇が待っているのをつゆほども知らず、
のんきに船上の人となったのである。
デキの悪い紙芝居じゃあるまいし、
ずいぶんともったいぶっていますが、次回をお楽しみに!

             =つづく=

 
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2010年1月29日(金)

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