「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第939回
銚子の真かじき 愛媛の真鯛

御徒町駅前のサカナのデパート「吉池」は
当コラムでも何回か紹介した。
ここ1年ほど、月に2〜3度は訪れている。
珍しいサカナたちに会えるのが何よりの楽しみで
鮮魚・乾物を問わずに品揃えが豊富だし、品質も優良だ。

先日は銚子港に揚がった真かじきのサクを見つけた。
漁獲量の多いめかじきはおなじみだが
真かじきは非常に珍しいサカナである。
以前、浅草の「弁天山美家古寿司」の5代目に
真かじきは銚子の突きん棒で獲ったものが最上と聞いた。
船の舳先(へさき)に立った漁師が
銛(もり)で突いてしとめるので
血液や内臓の迅速な処理が可能となるのがその理由。

入荷さえあれば「弁天山美家古」では
真かじきの昆布〆が食べられるが、めかじきは扱わない。
図体のデカいめかじきは
どことなく江戸前のイメージにそぐわず、
ここは真かじきが正解だろう。

「吉池」の真かじきは一見してそれと判る、
ほんのりとしたガーネット色を帯びていた。
これだけで白っぽい薄ピンクのめかじきよりも
ずっと食欲をそそられるのである。
4〜5パックしか出ておらず、すかさず買い求めた。
100グラム弱のちょうど1人前ほどで500円と少々だ。

刺身を何かもう1種類と物色を続けた。
同じ養殖モノの縞あじと迷った末、
瀬戸内は愛媛の海で育った真鯛を購入する。
真鯛も真かじきとほぼ同値であった。
ついでに野菜コーナーで生わさびも忘れずに。
自宅の冷蔵庫にあるにはあるが、残り少なく、
親指の先ほどにチビッており、いささか心もとない。

この夜の晩酌はビールのあとで日本酒の冷や。
わさびを鮫皮のおろし板でネットリとおろし、
小皿にキッコーマンの特選有機醤油を注ぐ。
この醤油、ラベルに本醸造を謳っている。
同時にその醤油と晩酌用の日本酒を
ほぼ同割りにして2皿用意し、
その中に真かじきと真鯛を漬け込んで
自家製即席ヅケを作っておく。
脂の乗った刺身はそのままよりもヅケのほうが良い。

銚子の真かじきと愛媛の真鯛。
いざ食べ比べてみたら、これが雲泥の差。
「どちらが旨かったか?」って?
結果は真かじきの圧勝であった。
オレンジがかった赤身の美しさもさることながら
上品なコク味が何とも言えない。
そのまま食べてよし、ヅケでさらによし。

一方の真鯛は別に不味くはないのだけれど、
舌にまとわりつく脂がヤケにシツッコい。
白身のサカナによく効くはずの本わさびが
脂に負けてしまい、顔色を失っている。
早く出荷するために栄養価の高いエサを与えられたのだろう。

めったにお目に掛かれない真かじきの刺身だが
もしもどこかで遭遇したら
ぜひともお試しあられたし。
まぐろ・かつお・めかじきとは一味違う美味に
舌ポン必至と相成りましょうぞ。

 
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2010年2月9日(火)

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