第949回
おでんも煮物もテンコ盛り

江東区・森下はひょっとしたら
門仲以上のグルメタウンじゃなかろうか。
有名な居酒屋「山利喜」の煮込みは
東京三大煮込みの一翼を担っているし、
ケトバシの老舗「みの家本店」は
江戸情緒を今に伝えている。

「京金」が良質な日本そばを提供し、
「満る善」は目の前で江戸前天ぷらを揚げてくれる
銀座「煉瓦亭」の流れを汲む「深川煉瓦亭」は
地元の人々の愛着を集め、「平和閣」は界隈随一の焼肉店だ。
カレーパン発祥の「カトレア」には感心しないけれど、
「ベッラ・ナポリ」では本場のナポリピッツァが楽しめる。
高橋（たかばし）まで足を伸ばせば、
東京で一、二を争うどぜうの名店「伊せ喜」が
昔ながらのたたずまいを見せている。

知名度では森下に一歩ゆずっても隣り町の菊川には
「山利喜」に勝るとも劣らない「みたかや酒場」がある。
儲けすぎてビルを建てちゃった「山利喜」よりも
初老のご夫婦二人きりで切盛りするこちらを
応援したくなるのは人情だ。
いや、そんな判官びいきを抜きにしても優れた酒場だ。

独りでフラッと現れるには
うってつけの店ながら問題が１つある。
とにかく何を注文してもポーションが大きいのだ。
少なくとも２人で出掛けないと、
目の前の皿にお手上げになってしまう。

壁のボードにビッシリ書かれたメニューを紹介しよう。
　まぐろ刺し・・・・600円
　酢だこ・・・・・・600円
　肉豆腐・・・・・・450円
　牛煮込み・・・・・450円
　くじら刺し・・・・700円
　とんかつ・・・・・700円
　はまぐり酒蒸し・・600円
　餃子・・・・・・・400円

サッポロ赤星ラガーで満たしたグラスを
相方のジンジャー・ハイボールと合わせる。
最初に注文したのは本日のおすすめの里芋煮。

里芋のほかにもいろとりどり photo by J.C.Okazawa

大したボリュームで、とても一人ではさばけない。
下町風の濃い目の味付けが
里芋にピタリとハマッて旨い、旨い。

ホッピーに切り替えて牛煮込みをはさみ、
ちょっと被る感じはあったが、名代のおでんを追加した。

デッカいはんぺんを中心にこれもドッサリ photo by J.C.Okazawa

はんぺん・さつま揚げ・すじ・ちくわ・ちくわぶ・
がんも・こぶ・玉子・こんにゃく・大根と10種も入り、
これでたったの400円。
まったくもって儲けようという気がハナからないのだ。

大量に野菜が投入された焼きそばで締め、
われわれのお腹はカエルの如くにパンパン。
酒場のハシゴをあきらめて勘定をお願いすると、
驚くなかれ、２人で3500円ときたもんだ。
有名店「山利喜」もけっこうだが
ぜひ、もう１駅ぶんだけ都心を離れてほしいものである。

【本日の店舗紹介】
「みたかや酒場」
　東京都江東区森下4-20-3
　03-3632-4744