第964回
蟹は天下の美味
蓼(たで)食う虫も好き好き。
虫のみならず、人それぞれに好みがあり、
その性向が顕著に現れるのは
異性と食べものに対してではなかろうか。
手前味噌ながらJ.C.の好きな女性のタイプは
ゴージャス&ビューティフルではなく
プリティ&キュートである。
古い例えで恐縮だが日本の女優で言うなら
高峰三枝子よりも高峰秀子(ケーシーじゃないヨ)。
外国女優の場合はリズ・テーラーよりも
オードリー(お笑いじゃないヨ)なのである。
これじゃ今の若者には理解できないかな?
こりゃ困った、今の女優さんはよく知らんもん。
乏しい知見を絞りに絞って、そうですなァ、
北川景子より掘北真希って言えばお判りいただけるか。
ん? 今度はオジさんたちがチンプンカンプン。
とかくこの世はままならぬ。
女性はやめて話題を食べものに移行する。
食の好みは幼少期に決まってしまうものらしい。
例えば40代になって豆腐の旨さに目覚めたり、
焼肉より鮨を好むようになることはあっても
基本的に子どもの頃、好きだった食物はずっと好きなのだ。
この傾向は人間と猫に著しいそうで
ウチの猫もその通りと相槌を打ち、ふと傍らを見ると
寝そべりプッチがこちらを見上げていた。
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ずいぶんリラックスしちゃって
photo by J.C.Okazawa
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猫用の缶詰は部屋中が匂うので
いわゆるウェットは避け、ドライフードを与えているが
ときどき人間さま用のツナ缶や鮭缶をおすそ分けすると、
ヤツは狂う。大いに狂う。
プルトップの蓋が開く音を聞いただけで
うなりを上げてまっしぐらにすっ飛んで来る。
まさしくクレージーキャットだ。
J.C.の大好物の横綱格は
何と言っても牡蠣・蟹・鰈であろう。
名付けて黄金の3Kトリオである。
牡蠣は生がき・酢がき・かきフライとみんな好き。
蟹は蒸してから適度に冷やしたのが一番。
ゆでると旨みが湯の中に漏れてもったいない。
鰈は刺身なら真子だろう。
星がれいは滅多なことではお目に掛かれぬし、
第一、フトコロが心配だ。
煮付けは目板とナメタが双璧。
年に1〜2度は訪れる小竹向原の「樽見」。
今冬も飲み仲間が集結した。
去年の今頃は河豚だったが今年の目当てはずわい蟹。
みんなで鍋を囲もうということで蟹スキにした。
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しいたけの飾り包丁が小粋
photo by J.C.Okazawa
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蟹スキは実に久しぶり。
ずっと昔に接待で何度も訪れた
六本木の「かに瀬里菜」を思い出す。
蟹脚にサッと火を通してしゃぶりつく。
旨いけれど、やはり“蒸し冷まし”には敵わない。
それよりも丸卓ではない横長の食卓だと
必ず鍋から遠目の位置に座する御仁が出てくる。
鍋の正面に座った者は彼らへのフィードに追われてしまい、
ちっとも蟹を食べた気がしないのである。
それでも芋焼酎をあおるピッチは衰えることなく、
浅い時間にすっかりデキ上がってしまった。
食後は近所のK木夫妻のお宅におジャマする。
ここでもトランプに興じながら赤ワインをガブガブ。
帰りの電車じゃグッスリ寝入ってしまい、
目覚めたら終点の新木場だ。
有楽町線だから救われたものの、
千代田線や半蔵門線だったらと思うとゾッとする。
【本日の店舗紹介】
「樽見」
東京都板橋区小茂根1-10-17
03-3959-0885
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