第965回
東映オールスターキャスト
京橋のフィルムセンターで
市川右太衛門主演の「旗本退屈男」を観た。
右太衛門三百本出演記念映画を謳い、
1958年に製作されたオールスターキャスト版である。
当時、右太衛門とともに
東映の取締役だった片岡千恵蔵はじめ、
そうそうたる役者たちが出演者に名を連ねている。
2人の御大以外に中村(のちの萬屋)錦之助、
東千代之介、大川橋蔵、大友柳太郎、里見浩太郎、
大河内傳次郎、月形龍之介、時代劇スターのオンパレードだ。
女優陣も花柳小菊、千原しのぶ、丘さとみ、
桜町弘子、大川恵子、花園ひろみと、
当時の東映を支えた美女たちが総出演。
現代では到底組み得ないキャスティングである。
「旗本退屈男」シリーズを最後に観たのは小学生時代。
黒澤明も「用心棒」を世に出した1960年は
キッカリと半世紀前のこと。
アメリカで「アパートの鍵貸します」、
フランスでは「勝手にしやがれ」、
イタリアでも「甘い生活」が撮られていた時代だ。
終映後、銀座に出た。
空腹感はないが、早いとこ冷たいビールが飲みたい。
高速道路の下をくぐり、並木通りを南に進む。
「奈須田酒店」の店先に差し掛かって思わず指パッチン。
酒屋の2階には立ち呑み「よりみちや」があるのだ。
数分後には手酌のビールをグイッとあおっていた。
2種類のつまみも運ばれた。一緒盛りである。
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ウインナーとたこ焼きのピアット・ウニコ
photo by J.C.Okazawa
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たこ焼きなんて何年ぶりだろう。
壁のパネルはアンクルトリスの柳原良平のイラストだ。
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なぜか広島県下のトリスバーのリストが
photo by J.C.Okazawa
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ハーフ&ハーフの小ジョッキを飲み干し、
「よりみちや」をあとにした。
つまみが刺激したせいか胃が働き始め、
もうちょっと何かを食べたがっている。
さて、どこで何をいただきましょうか。
通りすがり、ガラス越しに見た中華屋のTVに
落語家の林家正蔵が映っていた。
彼は「浅草を食べる」を愛読してくれている。
いつぞやたまたまヒットした彼のブログで知った。
J.C.は彼の父親、先代・林家三平のファンだけに
このときは無性にうれしかった。
同時に三平の好きな店が
有楽町の「中本」だということも知った。
濃い醤油色のスープに
太麺のラーメンが好物だったそうだ。
30年以上も前、よくお世話になった「中本」に向かう。
もちろん「蒙古タンメン中本」とは縁もゆかりもない。
小盛りラーメンがあるので、それをいただく。
若者に見向きもされなくなったクラシックな味を
若者が一人もいない店内で独り楽しむ。
三平の派手なアクションに沸く寄席のざわめきが
耳の奥で聞こえたような気がした。
【本日の店舗紹介】その1
「よりみちや」
東京都中央区銀座1-4-6ナスダビル2F
03-3561-1212
【本日の店舗紹介】その2
「中本」
東京都千代田区有楽町1-10-1有楽町ビルB1F
03-3213-8489
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