「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第966回
女が消える上中里(その1)

最初におことわり。
物騒なサブタイトルで“女が消える”といっても
誘拐・拉致・失踪・蒸発など、
犯罪や事件とはいっさい関わりがございません。

いえ、JR東北本線の上中里の話ですがね。
何でも運転系統上では
京浜東北線の扱いとなる駅らしいが
界隈はヤケに寂しいところ。
地図上では北区のほぼ南端に位置し、
これより南はこれも寂しい田端を残すのみである。

なにせ、京浜東北全線の中でもっとも乗降者数が少なく、
唯一の委託駅だというんだから、さもありなん。
ちなみに委託駅というのは
鉄道事業者以外に駅業務を委託した駅のこと。
JR東日本の管轄内にこんな駅があるとは知らなんだ。
朝夕のラッシュ時でも構内は閑散としているらしい。
商業店舗だったらツブレてるね、間違いなく。

まったくもって何もないところながら
駅の南側だけは辛うじて旧古川庭園があったり、
そこへ通ずる道すがら、平塚神社があったりもする。
いつぞやこのコラムでも紹介した
恐るべきボリュームを誇る、中華「百亀楼」もこちら側だ。

線路の反対側、駅の東から東南にかけては
人気(ひとけ)の少ない住宅街が申し訳程度にあって
その先は操車場の線路が何本も
高崎線の尾久駅までずうっと続いている有様。
およそ人が棲んで楽しいエリアではない。
(住人の方々、ごめんなさい)

去年の秋口のこと。
都内に唯一残ったチンチン電車の都営荒川線、
その梶原駅から真南に進路を取って歩いていた。
上中里駅の北側にひっそりと隠れるように
存在していた小商店街を発見したのはこのときだ。
商店街には気になる大衆食堂が1軒。
いつか行ってみようと思っていたものの、
それから半年近くの月日が流れてしまう。

やっと訪れたのは2月上旬の月曜日。
「花屋食堂」は変わらぬ姿を見せていた。

食堂というより旅館みたいなたたずまい
photo by J.C.Okazawa

ねっ? どこか惹かれるものがあるでしょ?
ちょうど昼めしどきの12時ちょい前で
店内は8割がた埋まっている。
運よく隅のテーブルが1卓空いておりツレと腰を下ろした。

相方のほかに女性は一人もいない。

オジさんばかりの店内
photo by J.C.Okazawa

2月のことで石油ストーブが赤々と燃えている。
その上の薬缶(やかん)は乗せたばかりで
たぎっておらず、まだ湯気が出ていない。

周りの様子をうかがうと
ほぼ全員が定食を食べている。
壁の品書きにはチャーハンやカツ丼も見えるが
誰もそういうものを注文していない。
われわれのあとから入ってきて
隣りの卓に相席したオジさん2人も定食2つであった。

          =つづく=

 
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2010年3月18日(木)

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