第969回
みんな朝から飲んでいる
池袋の“袋”にちなんだのだろうか、
あるいは“おふくろ”の味を提供するからなのか、
池袋西口から東京芸術劇場前の広場に抜けてゆく、
短い路地にユニークな大衆酒場「ふくろ」がある。
1階から3階まで、ぜえ〜んぶ酒場なのである。
まあ、こういう店はほかにもあろう。
とにかく「ふくろ」を特徴づけているポイントは2つ。
その1――毎日7時から24時まで通し営業の年中無休
その2――毎月8日は料理全品が半額の謝恩サービス
このシステムは東京広しといえども
そうそうあるものじゃない。
浅草は合羽橋通りの洋食「豚八」が
24時間営業・年中無休をやめて久しい。
現在もこの「いつでもオープンシステム」を貫くのは
鶯谷の大衆酒場兼食堂「信濃路」と
渋谷の焼き鳥「山家(やまが)」くらいだろうか。
これに準ずるのが上野の酒場「大統領」、
赤羽の立ち呑みおでん屋「丸健水産」、
そして西新宿の中華「岐阜屋」あたりか。
赤羽の「いこい」と「まるます家」も早朝から飲めるが
それぞれ定休日を設けている。
恵比寿の焼き鳥「たつや」も同じ口だ。
さて、池袋「ふくろ」である。
芸術劇場で何かあると
その帰りにグループで訪れることが多い。
クラシック音楽・フラメンコ・京劇と、
なぜかこの劇場の催し物とは縁があるのである。
過日、珍しく“のみとも”と2人で立ち寄った。
 |
入口の価格表が極めて明朗
photo by J.C.Okazawa
|
これなら誰しも安心して入店できるというものだ。
2階のカウンターに止まり、大瓶を抜いてもらい、
つまみに煮こごりとカツ煮をお願いする。
 |
練り辛子を添えた鮫の煮こごり
photo by J.C.Okazawa
|
 |
雰囲気とは裏腹に上品な豚カツ煮
photo by J.C.Okazawa
|
この店はけして安かろう悪かろうの駄店舗ではない。
料理が飛びきりとはいかないまでも水準をクリアしている。
加えてカウンター内のオバちゃんたちは
客が勧めればガンガン飲んでくれる。
それこそ客2人、オバちゃん2人で酌み交わしたひにゃ、
ビールの大瓶が次々とカラになってゆく。
「アラ、悪いわねェ」なんて言いながらも
悪びれたところがなく、どこまでも気さくだ。
先日、所用で池袋に行った際、
いい機会だからちょいとのぞいてみた。
朝の9時過ぎでこのときは入店しなかったが
中をしっかりチェックしてきた。
料理半額デーの8日でもない、
平日の朝っぱらから居るわ居るわ、
いったいこの人たちはどこから集まって来たんだろう。
今は亡き青江美奈の最大のヒット曲は「池袋の夜」。
レコードの売上げは100万枚を超えている。
その2番。
♪ 美久仁小路の 灯りのように
待ちますわ 待ちますわ
さようならなんて
言われない 夜の池袋 ♪
ここに出てくる東口の美久仁小路に「ふくろ」の支店がある。
夜のみ営業のこちらは居酒屋探訪の初心者向け。
彼女と一緒なら支店のほうがリラックスできよう。
【本日の店舗紹介】その1
「ふくろ」
東京都豊島区西池袋1-14-2
03-3986-2968
【本日の店舗紹介】その2
「ふくろ美久仁小路店」
東京都豊島区東池袋1-23-12
03-3985-5832
|