「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第973回
あら!珍しや アルザス料理

1974年夏、2度目の欧州周遊旅行に出掛けた。
ドーヴァーの駅で偶然にも高校からの友人の
S水クンと再会してから9ヶ月の月日が流れていた。
あのときと同じようにロンドンからパリに入ったが
このときはドーヴァーからではなく、
ニューヘヴンの港から対岸のディエップへと海峡を渡った。

パリに数日滞在したあと、
リスボン―セビリア―コルドバ―グラナダ―
バレンシア―バルセロナ―カルカゾンヌ―
ニーム―アルル―アヴィニョン―リヨン―
ブザンソン―ストラスブール―ルクセンブルグ―
ケルン―デュッセルドルフ―リューベック

と、1971年の初回には訪れなかった街ばかりをめぐり、
S水のいるストックホルムに落ち着いたのだった。

セビリアではフラメンコを
バレンシアでは闘牛を観た。
リスボンではいわしの炭火焼きを
セビリアでは海老のにんにくオイル煮も食べた。
本場の名物らしきモノを楽しんだり、
味わったりしたのは結局それだけ。
ひたすら節約に努めるケチケチ旅行であった。

表題のアルザス料理もアルザスの中心地、
ストラスブールで食べた覚えはない。
ずっとあとにパリで初めて出会ったのである。
記録がないので記憶に頼るしかないが
ストラスブールでの昼食はよく覚えている。
水鳥戯れる運河のほとりで
テイクアウトのローストチキンを食べた。
バゲットと赤ワインを傍らに
野菜も食べにゃあと、バカデカいきゅうりを調達。
ついでに買ったマヨネーズは甘すぎて無駄にした。

アルザス料理はその歴史的背景から
フランスよりドイツ色のほうが強い。
一番有名な料理はシュークルート。
東京でもドイツ風のビヤホールで
似たような料理にお目に掛かることが多い。

薄髪の咬みつき亀、友里征耶から夕食の誘いがあった。
都内では珍しいアルザス料理店というのに惹かれた。
浅草橋の「ブラッスリー・ジョンティ」に
集まったのはほかに女性が2人。
何でも元々は友里1人が美女3人をはべらせ、
酒池肉林の世界を画策していたらしい。
まったくもってトンデモない吸血鬼だ。

うち1人のピンチヒッターで参加したのだが収穫はあった。
料理もワインも期待を上回ったのである。
クレマンと白ワイン中心ながら、
ピノ・ノワールの赤があったし、
何よりも個性的な皿の数々が一食に値するものばかり。
くだんのシュークルート以外に
ピッツァ風のタルトフランベ、豚足と豚耳のアスピック、
エスカルゴのクリーム煮、それぞれにみなよろしい。

極め付きは本日のモツ料理で
コブクロとシロの白ワイン&ヴィネガー煮。
早い話が子宮と小腸である。
牛スネや牛モツは赤ワインやドゥミグラと相性がよいが
豚系は白ワインやヴィネガーと合わせると、キレ味が生まれる。
咬みつき亀の誘いで、いい思いをしたことは少ないけれど、
メンバー効果も手伝い、当夜の食後感は上々であった。


【本日の店舗紹介】
「ブラッスリー・ジョンティ」
 東京都台東区浅草橋2-5-3
 03-5829-9971

 
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2010年3月29日(月)

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