「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第982回
黒い瞳に見つめられ(その1)

水曜夜の苦い後味がいまだに残って不愉快である。
A級戦犯はもちろん岡田監督だが
ここまで放任した協会もいけませんわな。
お先真っ暗のクラ。

おまけに深夜のチェスカにも肩透かし。
開始早々の失点では楽しみも何もあったものではない。
哀れJ.C.、黒房下へもんどり打って転げ落ちた。
本田クンもまったく精彩を欠いてしまい、
早くも化けの皮がはがれた様子。

気を取り直して「食べる歓び」いきます。
さて、読者の方々は縞あじというサカナをご存知だろうか?
スズキ目アジ科のサカナはアジの仲間では最高峰。
何が最高峰かというと、味も値段もである。
まあ、高級魚の代名詞ということです。
四国と九州の間、愛媛と大分にはさまれた豊後水道から
揚がる関あじを珍重する向きは多く、それに異論はないが
食味のよさは何と言っても縞あじであろう。

シマアジを島あじと記す人もいる。
三陸以南の太平洋沿いに棲息し、
取り分け島嶼(とうしょ)での水揚げが目立つことが
その名の由来だと推測される。
一方、縞あじをとる人は
体側を走る黄色い縞に目をつけているわけだ。
島の近くだと、例えば伊豆七島辺りでは
縞あじ以外のサカナも豊富に獲れる。
したがって“縞”のほうに信憑性を感じるのが自然だ。

鮨屋の暖簾をくぐった際、
若い衆や女将さんにまず訊ねるのはビールの品揃え。
続いて親方に対する第一の質問は
「今夜の白身は何が?」――ほぼ100%この調子である。
「ええ〜っと、鯛とブリですね、あとカンパチが・・・」
―― こういう人の手になる刺身や鮨は食べたくない。
「平目と真鯛です。今日は皮はぎもございます」
―― I love this style of Sushi-shokunin.

ブリやカンパチは白身とは言わぬ。
彼らは青背と呼ばれてしかるべきなのだ。
最近、真っ当な鮨屋ではトンと見掛けぬようになったハマチ。
以前を言えば、あちこちのすっとぼけた鮨屋の親父は
ハマチまで白身の一員に加えていたものだ。
こうなると、あきれてモノが言えない。

縞あじは分類上は青背になるが、実際はかなり白身に近い。
下手なスズキあたりよりずっと上品な風味を内包している。
ある意味、白身と青背のいいとこ取りといってもよい。
ただし、天然モノが極めて少なくてほとんどが養殖。
それでもなお、美味なサカナである。

2ヶ月ほど前の夕刻。
都内有数の木造建築、本郷館の脇を通りすがった。
震災にも戦災にも耐え抜いたこの館(やかた)は
取り壊してほしくない明治38年築の建物である。
木造3階建ての雄姿は何度も拝んでいるが
その日は幸せな出会いにも恵まれた。
うるんだ黒い瞳に見つめられて年甲斐もなく、
胸の奥で何かがパチンと弾けたのである。

            =つづく=

 
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2010年4月9日(金)

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