「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第986回
やっぱり好きな 西荻窪(その2)

酒場「千鳥」はよい店であった。
バル「西荻スイッチ」もまたしかり。
この2軒の初訪問は去年の暮れだから、まだ半年にもならない。
殊に「千鳥」は店の前を何度も通っているのに
迂闊(うかつ)にも気づかなかった。
まあ、それはよいとしよう。
これから西荻を訪れる際に立ち寄ればよいのだ。

南口から線路沿いを荻窪方面に戻りかけたところに
フレンチの老舗「ビストロ・サン・ル・スー」がある。
その手前に昨年オープンしたのが「Bistro Féve」だ。
féveは仏語で天豆の意。
男性シェフと女性の接客係が2人だけで営んでいる。

「サン・ル・スー」に行くつもりがたまたま途中で見つけ、
空席があるのをこれ幸いと、「Féve」に入店してしまう。
店先の料理ボードに惹かれたのも一因である。
エーデルピルスの生を飲みながら献立を立ててゆく。
どの皿もボリュームは相当のものだという解説。
前菜でも主菜なみの迫力があるとのことだった。

それぞれ少しずつ量を減らしてもらい、お願いしたのはまず、
鱈白子と槍いかの南仏風ソテー。
店側では南仏風とは謳っていないが
トマト・ケイパー・パン粉を使っているので勝手に名付けた。
あとはグルヌイユ(食用ガエル)の、これもパン粉ソテー。
黒米を詰めたホロホロ鳥のロースト。
そしてメインのメインに仏産子鳩のロースト。

結局、白子だ、カエルだ、ホロホロ鳥だ、子鳩だと、
一般的な食材には食指がまったく動いていない。
この注文の仕方はきわめてJ.C.的といえる。
レストランでもビストロでもブラッスリーでも
リストランテでもトラットリアでもオステリアでも
牛肉と豚肉を食べることはほぼ皆無に等しい。
理由は簡単、牛・豚は自分で買ってきて
自分で料すれば済むからである。

ジューシーさを失ったホロホロ鳥は残念。
グルヌイユはかなり太めのもも肉で食べ応えあり。
もっとも印象に残ったのが子鳩で
内臓を使用するサルミソースでいただいたが
スペインの赤と実によく合った。

この夜のワインは2本とも赤で
プロデュットーリ・バルバレスコの
ランゲ・ネッビオーロ‘07年(5000円)と
リベラ・デル・デュエーロのペスケラ‘06年(6000円)。
ビストロなのにどうしてフランスワインを飲まないんだ?
そう思われる方も多かろう。
実は当世、押しなべて仏産の質が落ちているように思われる。
値付けも高めでCPの悪さが顕著になっている。

鳩のような、しかもサルミソースのような
強烈な個性を持つ料理には
並みのブルゴーニュでは太刀打ちできない。
料理に見合うほどの熟成度を備えたワインとなれば、
おいそれと店にストックはなかろうし、
第一、こちらのフトコロがたまったものではない。

2回に渡って紹介した3軒は
いずれも遠方から出掛けて悔いの残らぬ優良店。
やっぱり好きな西荻窪、
次回の西荻行きは間近い大型連休となりそうである。


【本日の店舗紹介】

「Bistro Féve(ビストロ・フェーヴ)」
 東京都杉並区西荻南3-17-6
 03-3333-0081

 
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2010年4月15日(木)

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