「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第990回
安くてたまげた毛蟹汁

イスラエル料理の「シャマイム」で夕食のあと、
江古田の町にまだ未練を残している。
量少なめでお願いしたものの、
フルコースを味わってしまっては
もうそんなには食べられない、のにだ。

ここで思い出したのが北口の居酒屋「和田屋」。
踏切を渡って反対側の浅間神社のそばにある。
最後に来たのは2007年7月だった。
庶民的な風情がそこはかとなく漂う、よい店だ。

余談ながら江古田は不思議なところで
線路の北に浅間神社、南には武蔵野稲荷神社と、
立派な神社を2つも抱えている。
抱えるといっても元を正せば、
神社のおかげで町が発展し、おかげで駅ができたのだろう。

奇妙にも江古田駅は練馬区だが
住居表示上の江古田は中野区。
しかも1から4丁目まである江古田の町は
駅からはるか南にあり、歩けば20分はかかりそうだ。
どうして駅名を江古田にしたのか不可解なことである。
そして江古田3丁目には
これもまた立派な氷川神社が控えているのだから
この近辺は神社の見本市のようなものだ。

まだ宵の口のことで「和田屋」の先客はオジさんが独り。
彼もちょうど入店したばかりと見え、
生ビールのジョッキを片手に刺身の注文をしている。
ん? 何だって?
聞くともなしに聞こえてきたのは、初がつおと真鯛であった。
ここの刺身はそこそこの量があるから健啖家なのだろう。

こちらはキリン・クラシックラガーの大瓶をやりつつ、
小肌の酢の物を真っ先にお願い。
他店の〆小肌か小肌酢洗いをここでは酢の物と呼ぶ。

やや大きめでナカズミといったサイズ
photo by J.C.Okazawa

ナカズミというのは小肌とコノシロの中間である。
〆具合が浅く、砂糖の甘みが勝ちすぎているものの、
小肌の特性を引き出してなかなかの美味。
これが525円では粉わさびに文句を付けられない。

先客の“初がつおオヤジ”が
焼きとんのレバーばかりを3本も頼んだ。
よく聞き取れなかったが
銀鱈だか、銀むつだかの煮魚も同時に注文。
盗み見れば、ずいぶん立派な体格の持ち主ではある。

J.C.とてこの店のレバーの旨さは承知しているから
負けじと、レバーをタレ、カシラを塩で1本ずつ。
ビールから樽酒(大関? いや菊正かも?)に切替えた。
そのために小肌は2切れ残してある。

“オヤジ”が再びレバーを3本追加。
おい、おい、こいつはほとんどどころか完全にビョーキだぜ。
結局はこの人、何か料理をもう1品(揚げ物だった)と
デッカイおにぎりを2個、味噌汁付きで平らげた。
視線を向けなきゃいいんだけど、
見えてしまうと非常に気持ちが悪い。

つられたわけではないが、つい味噌汁がほしくなり、
毛蟹汁を所望してみると、何とこれが420円也

小さいながらも毛蟹が1匹入り
photo by J.C.Okazawa

身肉は少なくともしっかり出汁が出ていて、しかも可愛い。

中年から初老に差し掛かる夫婦が営む「和田屋」。
江古田随一の酒場としての折り紙を付けたい。


【本日の店舗紹介】
「和田屋」
 東京都練馬区栄町30-2
 03-3992-3153

 
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2010年4月21日(水)

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