「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第991回
ライク・ア・ローリング・ストーン

日曜日の新宿3丁目。
なかなか予約の取れない人気店「西尾さん」で
“しぞーかおでん”を食べた話は
ついこのあいだ書いた(第981回参照)。
次のお客のために19時前には席を空けてお勘定。

さて、そのあとである。
ここでおめおめと帰宅の途に着くようでは
J.C.オカザワの名が廃(すた)る。
ん? 何だって?
「栄えてもいない名前が廃れるわけはない!」ってか?
いや、ごもっとも、ごもっとも。
でも、時間が来たからって尻尾を巻いてたひにゃ、
「食べる歓び」を綴る資格とてなく、
コラムの担当を外されちまいやすよ。

新宿通りの舗道にたたずみ、思案する。
西新宿よりはずっとマシながら
東新宿とて店舗の数は腐るほどあるわりに
これといった佳店に恵まれないのが実情だ。
それが“食の不毛地帯”新宿の宿命なのである。

頭の中のリストをパラパラめくってみると
「浪漫房」&「梟門」の姉妹店同士、
「鼎(かなえ)」、「どん底」、
「キリストン・カフェ」などが浮かんでは消えた。
花園神社裏のゴールデン街という奥の手もあるが
もうちょっと何かつまみたい。

ここで思いついたのは、もつ煮込み専門店「沼田」。
庶ミンシュランA」では無印良店に
カテゴライズしたほどの気に入り店である。
「そうか、そうか、この手があったか!」
ほくそ笑んでこれにて一件落着と思われた。
以前の路面店のほうが雰囲気はよかったけれど、
1年前に近所の2階に移転してからだって悪くはない。

ところがである。
これは“うたかたの名案”でしかなかった。
砂上の楼閣が崩れ落ちるが如くに
弾む心は天国から地獄へと
♪ まっさかさまに 堕ちてdesire ♪
だから新宿の飲食店はアテにならないんだ。

あれほど卓抜だったもつ煮込みが
ごくフツーになったというより、
むしろアベレージ以下に成り果てた。
味噌・醤油・カレー・日替わり塩と4種あるうち、
此度は味噌と醤油を試してみたが
どちらもしょっぱいだけでコク味が消え失せている。
おそらく塩気に蹂躙(じゅうりん)された舌が
滋味を感じ取れないからだろう。

ボブ・ディランの不朽の名曲、
ロックに反体制的な息吹を初めて与えた偉大な曲、
「ライク・ア・ローリング・ストーン」に登場する、
Miss Lonelyの転落そのもので
「沼田」の煮込みもまた、坂道を転げ落ちる岩石の如し。
よって「沼田」は無印良店の圏外へと
「風に吹かれて」去りぬ。

国破れて山河あり、障子破れてサンがあり。
判っていただけますよね? この気持ち。


【本日の店舗紹介】
「沼田」
 東京都新宿区新宿3-6-3 2F
 03-3350-5029

 
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2010年4月22日(木)

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